結構筋のいい話の気がします。
半年ほど全くブログを更新していませんでしたが、久しぶりに書きたくなったので書いてみます。
先日発表された、楽天と日本郵政の資本提携は結構いいんじゃないかと思います。
楽天が物流に力を入れることはとてもいいことのように思えます。
なぜかと言えば、人の生活にとって、お金の流れや情報の流れと同じくらい、物の流れが重要だから。
これだけだと伝わらないと思うので、深堀りしていきます。
まず、楽天と言う企業を捉え直す必要があります。
未だに、楽天=楽天市場といったイメージが強く、アマゾンと同業の物販業で、ライバルと言うより一方的に負けているイメージが強い方もいるかもしれません。
しかし、もはやアマゾンも楽天も物販業ではないと言って良いでしょう。
アマゾンに至っては、利益のほとんどはAWS、アマゾン・ウェブサービスという、クラウドサーバーはじめ、ITインフラを提供する企業向けのIT事業から生み出しており、財務諸表的には物販よりそっちがメインです。
要するに、アマゾンは巨大ECサイトだったわけですが、その巨大かつ安定・安全なサイト運営ノウハウと必要なITインフラ自体を売りに出したのがAWSです。
そして、多くの人がアマゾンのアカウントにクレジットカードを登録しているので、他のECサイトや店舗でのキャッシュレス決済でも、アマゾンのIDだけで買いもできるようにする仕組みがアマゾン・ペイ。
また、超効率的な物流システムをもっているので、その物流システムを、他業種だろうがライバルだろうが、企業向けに提供するのがアマゾン・フルフィルメント。
このように、アマゾンというのは、巨大物販サイトだったわけですが、それを支える最先端かつ超効率的な、ITインフラ技術、決済インフラ技術、物流インフラ技術、それ自体を提供することを中核に据えて、お金、情報、物のすべての流れに関して、アマゾンのサービスを利用させるようにして、世界を支配下に置こうとしています。
同じように考えると、楽天も、もはやグループの中核は楽天カードと楽天銀行の金融ビジネスであり、物販事業者ではないです。
ただ、あれこれ手を出して、たまたま上手くいっているのが金融なだけと、どれも中途半端というイメージがつきやすいですが、楽天を貫くものは、楽天ポイントであり、楽天経済圏です。
生活に必要な様々なサービスを提供し、色んな生活インフラを楽天グループに変えていくと、変えれば変えるほど、お得になっていくという、楽天経済圏の提供こそが楽天の柱です。
そう考えていくと、楽天ペイや楽天モバイルなんかに今は注力していますが、物の流れ、物流にある程度コミットせざるをえないだろうと考えていたので、(何やっていいか分からなくて路頭に迷っている)日本郵政との提携は筋が良いなと思ったわけです。
なんだかわかったようなわからないような話だろうと思うので続けます。
かなり脱線かもしれませんが、私がこの話を聞いたときに最初に思い出したのは、ある意味世界第一のキャッシュレス先進国である中国におけるアリペイとWechatペイの大戦争の話。
アリペイがキャッシュレス決済の第一人者であり、一気に普及し、それしかないから当然最初はシェア100%なわけですが、後発のWechatペイが登場し猛烈にシェアを伸ばします。
アリペイと言うのはECサイトのアリババから発展したキャッシュレス決済で、要するにアリババのアカウントでどこでも買い物ができるようにするという手法であり、QRコードを使った仕組みにより大流行するのですが、他方のWechatペイのWechatというのは、日本でいうラインであり、Wechatペイというのはラインペイのようなものです。
アリペイはECサイトのアカウントが発祥ですから、そこにはコミュニケーション機能が無かったわけですが、Wechatペイと言うのはラインのようなチャットツールに財布機能と送金機能を持たせたものであり、中国では日本以上にお年玉文化が盛んですから、そういった背景の下、アリペイにはできないニーズを上手くくみ取って、中国ではWechatペイがシェアを伸ばすわけです。
そこで、慌ててアリペイはWechatペイに対抗すべく、コミュニケーション機能を実装するのですが、まあそれが上手くいかない。
ただ、そこからがアリペイ、アリババのすごいところで、こりゃ上手くいかないということで、コミュニケーション機能を切り捨てます。
というのも、人と人が繋がりコミュニケーションするところではお金の移動が伴うことが多いからWechatペイが流行するのはある意味当然であるが、財布にコミュニケーション機能は不可欠なものではなく、自分達アリペイはあくまで、電子財布なんだから、それを軸に機能を発展させていくべきで、ライバルの真似をしても仕方がないという判断をします。
自分達の中核は電子財布機能、Wechatペイの中核はコミュニケーション機能、その境界部分でぶつかることはあっても、あくまでそれぞれの中核は異なり、それぞれの中核を伸ばしていくことの方が重要なんだと。
なんだか脱線しましたが、要するに楽天の中核は楽天経済圏の提供であり、楽天市場がアマゾンに負けたとしても、多くの人がアマゾンの方が圧倒的に使いやすいと楽天をぼろくそに語っても、まさに私がそうですが、アマゾンに登録しているカードが楽天カードなら、ある意味それは楽天の勝ちなんです。
楽天市場がアマゾンにボロ負けしようが、楽天デリバリーがUBER EATSにボロ負けしようが、ユーザーがアマゾンやUBERに登録しているカードが楽天カードで、電話が楽天モバイルであれば、それは楽天の勝ちなわけです。
どんな新規サービスが生まれようとも、海の外からやってこようとも、ここ日本では多くの人が楽天経済圏のサービスを、根本的な部分で使用しているという状況に持っていくことこそ楽天の目指す方向でしょう。
ECサイトという一段階薄い部分はだれが覇権を握っても関係のない、根っこの部分を抑えることが重要。
そう考えると、物流に手を出すのは必須でしょう。
個人的には、日本郵政と組んで、個人間のDVP決済を提供するのはどうかなと思う(思い付きだけど)。
DVP決済というのは、Delivery VS Paymentの略で、物と金の動きを連動させる仕組みです。
知らない人同士の取引だと、売り手は買い手がちゃんと支払いするのか不安だし、買い手は売り手がちゃんと商品を発送するのか不安です。
そこで、最初に代金を買い手が払うわけですが、第三者が間に入ってその代金を預かり、その連絡を受けて売り手が商品を発送し、買い手が商品が無事届きましたと報告すると、預かった代金を売り手に渡すという仕組みのことで、これは必ず、信用のある第三者の介入が必要です。
これを非常に合理的に構築したのがまさにメルカリなわけですが、逆の見方をすると、メルカリはフリーマーケット機能を中核に置いて、その為に必要な手段としてメルカリでの売買にのみ使える機能として実装しています。
しかし、個人と個人が繋がって直接取引する機会は増えています。
見知らぬ他人との取引が不安で、このDVP決済の仕組みを使いたいがゆえに、メルカリを使って苦労している人はたくさんいます。
具体的には、オーダーメイドアクセサリーとか、カスタムメイドのゲーミングPC作成とか。
本当は、具体的なものがないとメルカリは不便だし(オーダー等のやり取りが面倒)、1割の手数料が高すぎるのですが、SNS等でつながったあやしい他人とDVP決済する仕組みがないわけです(ないわけじゃないんだけど)。
ヤマトにも匿名配送のサービスありますが、代金を預かったりする仕組みはありません。
また、メルカリの場合、オーダーメイドだろうが何だろうが、具体的な有形物のやり取りが必要で、無形のサービスのやり取りは規約違反です。
しかし、今はゲームのコーチングだったり、プロミュージシャンが楽器を教えたり、見知らぬ個人と個人が繋がってサービスのやり取りをする場面がたくさんあり、そのためのサイトもたくさんあります。
そして、そういったサイトなんていうのは、個人と個人が出会う窓口の1つでしかないわけで、メルカリに対抗してラクマなんてやってないで、もっと根本的なDVP決済そのものを提供すればいいのにと思います。
これこそが、私が、楽天が日本郵政と資本提携して、物流に注力することを筋がいい話と判断した理由です。
DVP決済の話はさておき、物販でアマゾンが覇権を握ったとしても、アマゾンは「楽天配送」が使えないからなー、なんて楽天経済圏の人が不満に思ってしまうような物流サービスを提供してほしいですね。
そういった、根っこの部分のサービス提供を頑張ってもらいたい。
もう終わりにしますが、「楽天今もって来い」とかどうでしょう。
UBER EATSあたりと提携して、プラス200円位払うと、最寄りの郵便局についた時点で、深夜だろうが早朝だろうが「今すぐ持って来い」ができる機能。
そして、持ってくる人をGPSで追跡可能。
世の中が便利になっても、人の不満は消えないもので、再配達とか時間指定の2時間くらいですらトイレやシャワーに行けずどうも面倒だし、置き配も宅配ボックスもいいんだけど、追加でいくらか払うから、「今家にいるから、すぐ持ってきてくれない?」って言いたい時が結構ある(私がせっかちなだけ?)。
メルカリが有形物の売買に自らを縛っているのと同様、UBER EATSも食事のデリバリーに自らを勝手に縛っている。
もっと根本的なところで物流を便利にできるはずだし、金融を持っているのはすごい強みだと思うのだけど。
どうでしょうか。