中小企業にはメリットがないという報道がありますね。
消費税増税後のキャッシュレスブーム。
その中で、キャッシュレス決済に伴う手数料の話がちらほらニュースに出るようになりました。
この報道だと、スギ薬局ではキャッシュレス決済の比率が増えたが、その分手数料負担も増え、今では、決済手数料の費用は、水道光熱費よりも大きいとのこと。
キャッシュレス決済の場合、お店は客から現実のお金をもらわない代わりに、間に入っている決済代行会社から入金を受けます。
ここで、SuicaならJR、楽天カードなら楽天、などと、各社から直接もらえればまだましなのでしょうが、実際にはキャッシュレスの会社やクレジットカード会社1社1社と個別契約するのはいろいろと面倒なので、間に決済代行会社という会社に入ってもらい、そこで一括して契約・入金してもらいます。
そして、当然、売り上げが100円であれば、手数料を引いた97円とかが振り込まれます。
これが決済手数料。
消費税増税後には、中小企業などでは5%還元など、キャッシュレスを使うとお得ということで、キャッシュレス売り上げが増えているわけですが、実は、中小企業にとっては、キャッシュレス決済の比率が増えると、手数料負担も増えるため、むしろ苦しくなるという事実があります(国の補助があるのですが3分の1だけなので、最低でも2%くらいはとられる)。
これは私も他人事ではなく、売り上げのほとんどがキャッシュレスですが、Paypay(手数料0)で支払ってくれると本当に助かります。
もっとも、キャッシュレス推進は国策として進められています。
いったいこれはなぜか。
ただでさえ中小企業は苦しいと言われているのに、なぜ推進するのか。
本丸は税収じゃないかな。
ここ最近(といっても1年以上前だけど)、知り合いが二人ほど、法務局(?)から役員登記の更新をしろといきなり通知を受けました。
1つは株式会社で、1つは社団法人。
共に休眠中の法人で、役員登記の更新なんてせずに放置していたのですが(それ自体ルール違反なのですが)、まあ放置状態の休眠法人なんて世の中に無数にあるわけで、事実上おとがめなしで済んでいたのに、二人とも突然通知が来て、慌てて役員再任決議の議事録作って、役員登記の更新をしてきたようです。
まあ、法律上の義務ですから当たり前の話と言えば当たり前なんですが、登記の手数料は数万円しますから、厳密にやったら結構な収入になるわけで、「国も本気で取れるところから取ろうとしているのかもね」なんて話をした記憶があります。
まあ2件しか知らないので真相は分かりませんが、そうやって、「取るところからはきっちりとるぞ」と方針を固めた場合に、一番、税金を取れてないゾーンは何処か。
もちろん、中小企業。
特に現金商売の中小企業。
みんなまじめに税務申告していますが、現金売上の申告は怪しい場合もあります。
消費税の還元対象だけでも中小企業は200万社あり、費用対効果を考えると、税務調査の対象にならないところがほとんどですし、税務調査が入ったところで、過去の現金売上については、帳簿と口座の入金のつじつまが合っていればそれ以上調べようがありません。
会社のランチに数人の同僚と近くの飲食店に行ったときに、お会計時にレジが空きっぱなしで、店員が電卓叩いて一人一人に釣銭渡してくれるところがありますが、そういう所は、休憩時間に後から、伝票見ながら一件一件売上をエクセルか何かに記帳しているのでしょうか。
それとも、一日の総額をまとめて記帳しているのでしょうか。
もちろんまじめに申告しているところがほとんどなのでしょうが、証拠がないのをいいことに、あれこれ「調整」しているところも残念ながらあります。
自分のポケットに入れちゃえば誰もわからないし、そもそも税務調査なんて来ないし、と。
クロヨン(9・6・4)とかトーゴーサン(10・5・3)という言葉がありますが、これはサラリーマンの場合は10割所得が把握されているが、自営業者は5割、農林水産業者は3割しか、所得の実態は分からないという話です。
(なお、トーゴーサンピンという場合のピンは1で政治家のこと)
もちろん、その理由には、私的費用を経費で処理しているなんて話もありますが、現金商売の場合はそもそも売上の段階から補足しようがないという現状があります。
反社会的勢力は必ず水商売のお店を経営していますが、それは、そういった店は足がつかないように現金利用する人が多く、売り上げのほとんどが現金だからです。
違法に稼いだお金をそのお店の売上にしてしまえば簡単にマネロンできます。
最悪3割くらいの税金を取られることになりますが、3割の手数料でマネロンできれば安いものです。
そのくらい現金商売の売上の把握は困難です。
しかし、それがキャッシュレスになると、決済代行会社が間に入り、改ざん出来ない明細が登場しますから、ガラス張りになります。
もちろん、100%キャッシュレスになることはないとはいえ、キャッシュレスの部分が増えるだけで、地域ごと、業種ごと、キャッシュレス割合などの比較分析が可能になり、新しいアプローチで税務調査できるようになります。
これをやりたいんじゃないかな。
お隣の韓国は、キャッシュレス決済の割合が高いことが有名ですが、財務省の資料など読むと(1,2)、そのきっかけはアジア通貨危機による財政破綻で、IMFの管理下に置かれたときに、IMFの指導もあって、脱税防止の為にクレジットカードの利用を強力に促進したという経緯があります。
使用者側に税制優遇措置を認めて利用を促進すると同時に、韓国の場合はクレジットカード端末がオンラインで国税庁に繋がっており、うちはカード利用できませんという中小企業でも、一定の場合レシート発行機能付きのレジ機械を義務付けしかもそれもオンラインで国税庁につなげたり、義務がない商店でもレシートを発行した売上には税制優遇を認めたり、徹底してクレジットカードの利用と現金売上の透明化を推進したようです。
そして、これが小売店の税務申告の適正性向上に大きく貢献したと言われています。
日本の消費税増税に伴うキャッシュレス推進もこの方向だと思うな。
まあ業務の効率化は間違いないから、最低賃金値上げの布石もあるかな(これは失業率の増加と裏表)。