これはもう壮大な社会実験ですね。
はじめに
昨日、Paypayが100億円キャンペーンの第二弾を行うことと、さらに、クレジットカード利用の上限額を変更するという発表をしました。
この二つを同時に行う所にPaypayの意図が見えてくる感じですが、明確な意図があるというより、やってみないとわからないと考えて動いている気もするので、そこら辺を考えてみます。
まずは、キャンペーンの内容と仕様変更の内容を見て、その後その意図を考えてみます。
還元率
基本的に前回と同じ100億円のポイント還元キャンペーンなわけですが、還元率が前回と少し違います。
以下が還元率です。
Paypay残高:20%
クレジットカード:10%
Yahooカード:19%
つまり、Paypay残高という、事前にチャージして使うデポジット型の部分(還元されるポイントもこれに入る)の使用は20%還元ですが、登録したクレジットカードでの支払いは10%還元ということになります。
なお、クレジットカードと言っても、Yahooカードの場合は19%還元になります。
なお、大事なPaypay知識として、Paypay残高をチャージするには、スイカやnanacoのようにレジやATMで現金チャージすることはできず、Paypayアプリに銀行口座を登録してそこからチャージするのが原則です。
登録したクレジットカードでチャージできないのが重要なポイントで、唯一それが出来るのはYahooカードのみとなっています。
還元額の上限
さらに、今回は還元額に二重の上限が付されました。
まず、重要なのは、上記の還元率にかかわらず、一回当たりの還元額の上限は1,000円というもの。
高額の買い物をしても、一回の買い物当たりの還元額の上限は1,000円で、1,000円を超える部分は切り捨てされます。
つまり、Paypay残高で1万円の買い物をすると、20%還元なので計算上は2,000円のポイント還元があるはずですが、この上限1,000円規定が登場し、付与されるポイントは1,000円となります。
その一方で、登録したクレジットカードで1万円の買い物をすると、10%還元なので1,000円満額が還元されますが、2万円の買い物をしても2,000円の還元はされず、還元額は上限の1,000円となります。
まあ、あえて言うまでもない計算ですが。
なお、還元額の総額についても、上限があり、5万円だそうです。
したがって、Paypay残高の利用だと25万円が上限になります。
とはいえ、Paypay残高で25万円のパソコンをかっても、一気に5万円還元されるわけではなく、一回当たりの還元上限は1,000円ですから、1,000円しか還元されません。
そう考えると、Paypay残高で最大効率で還元を受けようとすると、1回あたり5千円が上限で、5千円の買い物を50回すると、最短で総額上限5万円のポイント還元を受けられます。
クレジットカード利用だと10%還元ですから、一万円の買い物を50回すると最短で5万円に達します。
この計算いらないか。
突然の仕様変更
このキャンペーンに合わせて、Paypayはなかなか過激な仕様変更をしてきました。
というのも、登録クレジットカードの利用による決済の上限額を大幅に減らしてきました。
2月4日以降は、クレジットカードの上限額は下記です。
3dセキュア承認済み
2万円(24時間以内)
5万円(30日以内)
3dセキュアなし
5千円(24時間以内)
5千円(30日以内)
なんか、1日前にPaypayが不動産賃貸仲介のエイブルと提携して、仲介手数料とかの支払いをPaypayで出来るようになったとかリリースしてたけど、3dセキュア認証しても上限5万円じゃどうしようもないしますけどね。
まあ、そこはさておき、従来は25万円まで使えたのが、最大でもクレジットカードの利用は5万円までという枠が設定されました。
つまり、Paypay経由でのクレジットカードの利用に関しては、大幅に利用限度額が下げられたわけです。
分析1
まずは、キャンペーンじゃなくて、上限変更の方。
これ、クレジットカード会社にいじめられたのかな?、そんなことないかな。
前回の不正利用は結果としてPaypayに落ち度はほとんどなかったのですが、ここら辺はよくわかってる人の方が少なくて、世間のイメージ的にはPaypayは不正の温床になったとマイナスの印象を与えています(私も加担してるけど)。
そこら辺を逆手に取られて、カード会社から、不正利用時の補償について上限設けられたかな?
5万円以上は自分達は保証しないから、Paypayサイドで勝手に補償してねと。
まあ、闇サイトに流出しているセキュリティコード込みのカード情報を登録されて利用されたなんて、結果的にはPaypayには責任は無くて、カード会社が補償すべきものなんだけど、カード会社的にはあまりPaypay経由で利用されてもおいしくないから、上限設けていじめたのかな。
ここは分かりませんが、可能性としてはあると思います。
分析2
上限変更についてのもう一つの可能性。
まず、Paypayの普及に関して、3dセキュア認証が相当障害になっているのは間違いないです。
私も、自分のところで使えるようになったのでお客さんと話しますが、クレジットカードの3dセキュア認証を知っている人はほとんどいなくて、相当登録の障害になっているはず。
しかし、分かってみれば大した話ではないし、周りに知っている人が一人でもいれば、すぐにわかる話。
そこで、3dセキュア認証していない場合は、カード利用の上限を5,000円まで下げてきたのかと。
つまり、20%に比べると少ないですが、10%の還元も相当なもので、せっかくだからクレジットカードをPaypay経由で利用しようとしている人達に、かなり低い利用制限を設けることで、3dセキュア認証せざるを得ない状況にして、これを機会に一斉に3dセキュア認証を上げようという意図なんじゃないかな。
まあ、不正利用防止という意味でも、Paypayとしては是非クリアしてもらいたいでしょうしね。
分析3
3dセキュア認証したユーザーの上限も5万円に下げるというのはちょっとびっくりですが、まあこれはキャンペーンと間違いなく連動しているでしょう。
前回みたいに100億円が一部のユーザーに消費され尽くされるのは避けたいですし、その温床はクレジットカード利用ですから、とりあえずキャンペーンが終わるまではクレジットカードの利用を控えさせて、なるべく幅広いユーザーにPaypayを利用してもらいたいとという意図でしょう。
特定の条件を満たしたユーザーについては25万円まで上げると予定らしいでしょうが、これはしかるべきタイミングが来たら、バンバンあげるんでしょうね。
しかし、今回のキャンペーン中はクレジットカードの利用は控えてもらおうと。
分析4
還元率が、Paypay残高は20%で、クレジットカードは10%という大きな差をつけてきたのも注目ですね。
まずいえることは、今回のキャンペーンの本丸はPaypay残高の利用促進でしょう。
上述したクレジットカードの新利用制限である30日5万円というのは、クレジットカードを日常生活で使う人にとっては生活費の支払いレベルで支障が出るレベルであって、クレジットカード派からすると、Paypay使えねーとなるのが当然で、Paypayにとってはかなりマイナスな仕様変更です。
しかし、クレジットーカードの利用者にとっては、Paypayを使うも使わないもカードを見せるかバーコードを見せるかの2択で、本質的にはPaypayというアプリを経由するかどうかに手間も含めて大した差は無くて、第3段キャンペーンなどやってメリットを与ええればいつでも戻ってきます。
というより、カード決済かQRコード決済かという区分自体がおかしくて、カードの利用方法が違うだけ。
そういう意味では両方使える場面であえてPaypayを使う理由は全くないですが、カード現物を見せるよりはQRコード決済の方がスキミングや番号流出のリスクが低いともいえる。しかし、それも過渡的な話で、非接触型が最終形態であるのは間違いない。
しかし、レンタル自転車など非接触型の端末をくっつけるのがコスト的に合わない場面ではQRコード決済の利用が不可欠になるので、結局、還元なんてしなくても使うべき時には使うし、還元で引きつけてもQRコードを経由するより便利な方法があればそっちに必然的に流れます。
したがって、キャンペーンでクレジットカード利用を劣後させるのはある意味合理的で、一時的にクレジットカード派の不満は買うけど、カードはじゃない人たちへPaypay残高の利用を促進する間、高額カード利用者に100億円が食い尽くされる恐れを除去しようとなったのでしょうね。
そして、その間に20%還元でPaypay残高の利用を可能な限り広めようと。
分析5
Paypay残高の利用が20%還元キャンペーンでどこまで利用されるかはかなり実験な気がする。
これ、キャッシュレス決済界隈の人達、みんな結果について興味津々なんじゃないかな。
日本は、現金大国ですが、その一方でデビットカードがびっくりするほど普及していない国でもあります。
私も、キャッシュレス決済をかなり利用しますが、人生で一度もデビットカード使ったことないですし、それと同じで、おサイフケータイでの楽天Edyやnanacoのチャージのために銀行口座登録したことないです。
いつもGoogleに登録したクレジットカードでチャージします。
あまり他の人の動向は知らないので極めて主観的な予想ですが、私のような人は多くて、オンラインチャージはクレジットカードで行う方が多数派なんじゃないだろうか。
なんで銀行口座を登録しないのかと聞かれると、不正が怖いというのもあるけど(預金がその場で確定的に減るから)、なんか抵抗がある。
理由はないです。これ何だろうか。逆の人もお互いに疑問かな。クレジットカードでデポジット型チャージって何やってんだと。
ポイントは、QRコードか非接触型かとかではなく、デビット型のオンラインチャージがどこまで普及のポテンシャルが見込めるかだと思います。
QRコードか非接触型かという区分はあんまり重要ではないのかな。
この20%還元キャンペーンで、Paypayに銀行口座を登録して、そこからの預金移動でPaypay残高をチャージして、買い物に使う人はどれくらい登場するのでしょうかね。
これは未知の世界でしょうね。
ただ、これがPaypayにとって非常に重要な実験であることは分かります。
今後の方向性を決めるうえで是非とも早めにケリをつけないといけない問題です。
20%還元キャンペーン中と、それによって獲得したポイントは使われるのでしょうけど、それを使って後は終わりとなるのか、それともそのまま使い続ける人がどれくらいいるのか、そのまま非接触型に流れる人がいたとしても、ポジティブかネガティブかはさておき、早めに知っておく必要があるんでしょう。
還元目当てで銀行口座を登録した人たちがどれくらい継続利用するかは非常に興味があります。
そして、キャンペーン中に少しでも銀行口座登録者を増やしたいからそこ、クレジットカードの利用の利便性を一時的に大幅に下げてきたんでしょう。
余談
Pyapay残高の利用がどこまで増えるかはなかなか難しい問題をはらんでいます。
私は以前、不動産金融の会社に勤めていましたが、よくフロントとミドルが喧嘩していました。
投資チーム(フロント)が、入居率があまりよくなくて困っているような変な物件を、これはいくらかけて修繕して、家賃を適正水準にして、しかるべき営業をかければいくらくらいの利回りの収益が見込めると言って物件を買ってくるのですが、その後は不動産管理チーム(ミドル)にバトンタッチします。
そして、ミドルチームが建物の修繕したり、管理会社を変更したり、賃貸仲介会社に営業かけて入居者を増やしたり、あれこれ頑張るのですが、なかなかうまくいかないという話はよくあります。
その時に、フロント側からするとミドルの努力が不十分となるのですが、ミドルからするとゴミ物件つかまされやがってフロントのそもそもの見積もりが甘いと、予算と実績のマイナス差異の責任の所在を巡って延々ともめるというのは良くある話です。
それと同じで、Paypay残高利用の普及は、加盟店開拓と利用方法の啓蒙という営業部隊の努力に依存する部分があります。
デポジット型電子マネーとしての利用を考えると、非接触型でピッとやる方が、アプリのバーコードなんて見せるより圧倒的に簡単です。
しかし、飲食店でテーブルに置いてあるQRコードを読み取るだけで決済できるようになれば、レジに並んでピッとやるより便利とも言えます。
つまり、結局QRコード決済というのは、QRコード決済独自のメリットを提供しないとキャンペーンなんかで過渡的に普及しても最終的に利用されないし、その逆に、QRコード決済しか利用できない場面があれば、キャンペーンなんかやらなくても本当は普及するはずです。
したがって、QRコード決済ならではの利用をどこまで啓蒙できるかに、Paypay残高の利用の普及はかかっています。
しかし、どんなにQRコード決済ならではの提案をしても、デビットタイプのオンラインチャージ自体にハードルがあるのかもしれません。
その時に、加盟店の開拓が不十分と取るのか、そもそもデビットタイプのオンラインチャージはポテンシャルが低いと認めるのか。
そして、その後の経営判断。
やっぱりQRコード決済は難しいのかな。
おわりに
Paypayが第二段キャンペーンを発表したので思いつくことを書いてみました。
鋭い人はわかると思いますが、なんだか書きながら混乱してきていて、QRコードVS非接触型の対決が本丸なのか、そこは本質的に対立の関係にないのか、ぐちゃぐちゃになっていますが、その反面本質が見えてきたような気がするのであらためてまとめます。
それにしても今回のキャンペーン、一零細加盟店としては、どうしようかな。
カードの利用上限が30日で5万円になったのは痛いなあ。