大塚家具騒動についてです。
目次
はじめに
ついに大塚家具が身売りするそうですね。
2代目の久美子社長が就任してから3年にしてどうにもならないところまできたそうです。
この問題、そもそもがお家騒動から始まるわけですが、遺言をめぐって遺族が喧嘩したとかではなく、創業者の父とそのエリート娘が会社立て直しの方向性をめぐって対立したことがきっかけです。
したがって、根本に経営方針をめぐる意見の相違がありますから、社会の経済・経営評論家のエキスパートたちが、先代社長の方針や久美子2代目社長の方針をあれこれ分析・評論しています。
ただ、いろいろ読んだのですが、正直どの分析・評論記事もピンとこないというか、ハッキリ言って薄っぺらい分析記事ばかりな気がします。
二代目社長の失敗というありがちなフレームワークに無理やりあてはめたり、財務分析を持ち出して間接部門の構造改革がどうのこうのとか。
中には、名著「失敗の本質」から、旧日本軍のガダルカナル島の闘いにおける戦力の逐次的な投入というなかなか渋い話題を持ち出して、社長交代の時の改革が小規模だったのが問題で、ドカンと巨額の投資をして大改革をしておけばなんていうこれぞ評論家的評論という感じのものありました(ちなみにその記事では巨額の投資の使い道として、人気広告塔を利用したSNS上のキャンペーンとかが有効な施策として挙げられていた気がする)。
明日は我が身なので他人の悪口はさておき。
私は、久美子社長の最大の問題は、時代の流れを全く読み取っていなかったことだと思っています。
具体的には、イケアやニトリのような企業を目指そうとしたところに、先見の明が無いと感じます。
なぜならば、イケアやニトリが今後潰れかねないからです。
実際に潰れるかどうかはさておき、大苦戦するのは必定で、そういう時代に私たちはいるわけです。
そういう大きな流れを捉えた上で個別的な問題の分析をしていくことが大事であって、今を見て今を語るような分析にはあまり感心しません。
ということで、私なりの大塚家具問題分析を披露したいと思います。
情報化社会とユニクロ
これからは情報の時代であるなんて、いまさら真顔で言うと、遅れた人どころか危ない人扱いされそうですが、実は、このポイントがまだなかなか理解されていない気がします。
昨年の秋ごろ、ユニクロの柳井社長が、これからユニクロは情報製造小売業を目指すと言いましたが、この意味が未だよく理解されていない。
情報製造小売業って何?っていう感じだと思います。
ユニクロがこういう表明をすることとなった背景にあるのは、リアルビジネスに差し迫っている危機です。
90年代から続くIT革命により、マイクロソフトだけでなく、グーグルやアマゾンなど、超巨大IT企業が登場してきました。
しかし、多くの製造業は彼らのことを利用することはあっても、ライバルになるとは考えていませんでした。
自分達は、モノという有形物をつくるリアルビジネスをしているから、無形の電脳空間でコミュニケーションだ何だとやっている企業がいくら巨大化したところで自分達にはあまり関係ないと思っていたわけです。
しかし、現実にはついに、そのバーチャル軍団が、リアルビジネスに突入する時代が来てしまったわけです。
中国の製造業のすさまじい発展もあり、超高級品を除いて、標準的な製品を販売することなんて誰でもできることになってしまったわけです。
そうなって来たときに、ほとんどのエリアにおいて、ビジネスの雌雄を決するのは、商品の細かい差異ではなく、情報を収集・利用。コントロールする力なわけです。
もう少し具体的に見ていきます。
与えられる側か与える側か
私たちは、分からないことがあるとグーグルで調べます。とても便利です。
また、アマゾンを利用する人は分かると思いますが、詳しくない商品を探しているときには、この商品を買った人はこれも買ってます的な、関連商品の提示は非常に役に立ちます。
このように利用者目線だけで見ると、私たちが有用な情報の提供を受けているだけのようですが、そうではありません。
私たちは、グーグルで調べる時に、何を知りたいかを入力しないと検索出来なくて、すなわち、グーグルに対して、自分が何を知りたいのかを教えています。
つまり、グーグルは、毎分毎秒、人が何を知りたがっているかを集めています(そしてそれを受けてターゲット広告を出す)。
これはアマゾンの場合も同じです。商品名を入れる場合もありますが、私の最近の例ですと、「キウイ、薄皮、ナイフ」なんて検索をしました。
アマゾンは、誰がどの商品のページを何分見ているかモニタリングしており、ユーザーが何を探しているかだけでなく、ある商品を見た人が同時に他のどんな商品を見ているかをチェックしており、そのデータに基づいて、関連おすすめ商品を提示しています。
つまり、アマゾンも、グーグルのように利用者の購買行動情報を収集しており、単に商品を売るだけでなく、ユーザーの直面している問題を解決するソリューション企業になろうとしています。
彼らの急成長を支えているのはこの情報収集プロセスです。
今現在、ネット通販の急成長により、リアル店舗の売り上げが大幅に落ちています。
ただ、この現象を、ネット通販が便利で、出歩くのが面倒なんて短絡的な分析をしてしまうと、現状を見誤ります。
そうではなくて、消費者からすると、自分が詳しくないジャンルの商品なんて、現物を手に取ってみたところでよくわからないわけです。
自分が現物から得られる情報よりも、それを実際に利用した人がどう感じているかや(ユーザーレビュー)、提案されるまで知らなった、直面している問題を解決する便利な道具の情報の方が重要で、それらを知ることが出来れば、現物を見ることなど不要だからです。
ほとんどの場合、現物をじっくり眺める必要性なんかなくて、それを利用した先行者の感想などこそがより価値のある情報となったとき、そういった情報を広く収集して、整理提供できるIT企業の方が、消費者にとっては便利であり、その結果どんどん成長して行くわけです。
家まで持ってきてくれるのが便利なのではなく、一番欲しい情報が用意されているから便利なのです。
テスラとアンダーアーマー
しかし、ここまでは、ネット店舗とリアル店舗のバトルでしかありません。
本当の転換点は、中国製造業の急成長とアリババの台頭により、外注することでなんの製造設備も持たないIT企業もそこそこの品質のオリジナル製品を作れてしまうようになった点です。
ここから、ネット通販企業が、既存小売業を駆逐するだけでなく、既存製造業を駆逐する流れが始まります。
ここで具体的に見ていくために、テスラに登場してもらいます。
テスラというのは、電気自動車のテスラではなく、スポーツウェアのテスラです。
アマゾンで、スポーツウェアを買ったり探したりする人で、テスラを知らない人はいないでしょう。
知らない人のために補足すると、コンプレッションウェア(ゴルフ選手や野球選手がユニフォームの下に着るようなピタッとした長袖のウェア)を中心としたスポーツ用品ブランドです。
私の記憶では、テスラというブランドが登場したのは、4,5年前じゃないかと思うのですが、当時は様々なジャンルで廉価な中国製の模倣品がたくさん登場し始めた時期で、アンダーアーマーのパクリブランド的製品も登場してきたかといった感じの怪しいブランドでした。
そもそもいきなりアマゾン上に登場したブランドで、聞いたこともないブランドでした。
当然、当時のレビューは、アンダーアーマーと比べてルーズ(コンプレッションが低い)だとか、サイズ感が分からないとか、縫製が甘いとか、安かろう悪かろうというネガティブなものばかり。
しかし、アマゾンでスポーツウェアを探すといつも上位に出てきて、しかも、安くてそれなりのデザインということもあり、クリックする回数が増えていきます(ブランド品のコンプレッションウェアが高いというのもある、通常5000円がテスラだと1500円とか)。
そして、テスラ側もユーザーが何を検索しているかを分析して(「スポーツウェア、涼しい」とか)、商品情報やアピールポイントを精緻化し、消費者ニーズに的確に商品を対応させることで(サイズ情報の拡充とか)、購入者もどんどん増えていきます。
そして、何より、購入した人がレビューを書き込み、そのレビューを受けて製品を改良することで、製品がどんどん良くなっていきます(間違いなく良くなっている)。
そして、ついに、圧倒的なコストパフォーマンスを実現するに至り、コンプレッションウェアの一大ブランドになってしまいました。
一部激しいコンタクトスポーツをしている人達から耐久性がまだ弱いと指摘されることも多いですが、最近ではすっかりアンダーアーマーを食ってしまっていて、最近の若い子達の間では、コンプレッションウェアと言えばテスラが定番なんていう評価すら受けてるんじゃないかと思います。
それもそのはずで、アマゾンでコンプレッションウェアで検索すると、一番上に登場し、しかも、手ごろな値段でレビューが数百件あれば、初めて買う人にとって筆頭候補になるのは当然の流れです。
こういった状況を受けて、20年ほど前に彗星のように現れ、スポーツ用品業界の優等生として君臨してきたアンダーアーマーですが、一般消費者向けの売り上げは相当奪われているんじゃないかと思います。
私は個人的に、テスラというは、アマゾンの隠れプライベートブランドの一つじゃないかと疑っています(真実は知りません、下種の勘繰りです)。
こうして、良質な製品を作っていた一流ブランドが、出自が全く不明のブランドに大きくシェアを奪われるわけです。
ユーザーレビューを受けて品質を改良し、消費者が何を探しているかを詳細に分析してアピールポイントを精緻化して、何より、たくさんのレビューが集まることでユーザーが安心して買えるような場を作ったことがポイントです。
勝負を決めたのは、製品の品質ではなく、消費者が目にする情報をコントロールすることだったわけです。
WEARとZOZOTOWN
WEARというアプリというかサイトを知っている人も多いかと思います。
これは、芸能人とかモデルさんとかが、毎日の服装をアップするアプリです。
芸能人の毎日の私服を見ることできるわけですが、本当のポイントはそこではなくて、来ている服のブランドや値段がわかり、しかもそのまま通販サイトにリンクされている点です。
有名人が実際に来ている服を売っている通販サイトにリンクされ、複数ある場合は複数のリンクが登場するのですが、常にZOZOTOWNが登場するわけです。
ZOZOTOWNの前澤社長というのは本当にすごいと思います。
当然芸能人に、全身ユニクロの人なんているわけなく、様々なブランドを組み合わせてコーディネートするわけですが、それら全部を購入できるのははっきり言ってZOZOTOWNしかないです。
ユニクロのサイトではユニクロの服しか買えません。
ユニクロなどのファストファッションブームが始まってから結構経ちます。
ユニクロのように安くてシンプル高品質というだけでなく、ZARA、H&M、アバクロなんていった安いだけでなくかつオシャレというファストファッションが一時期世間をにぎわせました。
そして、ファッションブランド受難の時代などと言われ、デパートなどが右往左往する中、ZOZOTOWNはちゃんと未来を見据えていたわけです。
ファストファッションブームの中、ZOZOTOWNは、ビル一棟借りて、販売する商品すべてのサイズを自分達で測りなおすという誰もが嫌がる地味な作業に邁進します。
S、M、L、XLなどという表記は同じでも実際には無視できないない差があることが服の通販の最大の障害である点に真正面から挑みます。
後から考えてみれば全部当たり前ですが、ファッションの業界でファストファッションが隆盛するといっても、おしゃれな人は絶対にファストファッションで全身を固めることなんてしません。
必ず、ファッションをめぐる情報革命が進んでいけば、大量のブランドを扱うネット上のファッションセンターが必要とされる時代が来ることが読んでいたわけです。
しかし、売るだけならだれでもできますから、ただ売るだけではなく、誰もが嫌がるような面倒な部分に真正面から取り組みノウハウを蓄積していき、誰にも迄できないファッションセンターを作り上げました。
そして、おそらく、WEARの中には、ZOZOTOWNにスポンサーされている有名人とかもたぶんいるんでしょうね(真実は分かりませんが)。ユニクロを着ている有名人もいます。
こうして、ファッション業界は、衣服購入するきっかけの前段階のファッション情報の流通のところの主導権争いを広げています。
ユニクロが情報製造小売業を目指すといったのもこの話で、消費者の目と耳に入る情報の段階から関与しないと、勝負にならないからです。
オシャレな商品はWEAR経由でZOZOTOWNに流れ、シンプルな標準商品はテスラのように、アマゾンのプライベートブランドに奪われかねません(なお、しつこいですが、テスラがアマゾンのPBかどうかは分かりません)。
ナンパ塾と脱オタク
話は、急に変わりますが、ナンパ塾というものがあります。
最近、犯罪事件で有名になったこともあり、その存在を知った人も多いかと思いますが、大変恥ずかしながら私にはナンパ塾界隈に詳しい知り合いがいます。
その友人に聞いたところ、ナンパ塾の第一回目の講義は、服を買いに行くのに付き合うのだそうです。
女性と知り合うためにナンパの仕方を教えるわけですが、その前段階として、まず服装についてアドバイスを与えるわけです。
そして、その内容がすごいなと思ったのですが、どのような女性をナンパしたいのか、ギャルを狙いたいのか、清楚なOLを狙いたいのか、そういったターゲットに合わせて服装をアドバイスするそうです。
これを聞いて、正直、何てレベルの高い仕事をしてるんだろうと思って感心してしまいました。
この情報というか、ノウハウは、ファッション雑誌にありそうでない情報です。
ファッション雑誌というのは、ファッションという文化を担う媒体で、女性をナンパするマニュアル本ではありませんから、ハンサムなモデルをかっこよく見せることや、著名デザイナーがデザインした服をハイセンスに着こなすことに焦点を当てています。
つまり、人や物に焦点を当てています。
脱オタクとか、大学デビューとか、そういう特集はあったりするのですが、その一歩先を行った情報を提供しているからこそ、ナンパ塾なんてものが流行るわけです。
ちゃんと、他では手に入らない情報を売っているわけです。
消費者が欲しているのは役に立つ情報です。
彼らは、オシャレな服がほしいのでもなく、オシャレになりたいわけでもなく、狙った女性を口説き落とすための道具としてのファッション情報がほしいわけです。
そして、その情報のあるところではためらわずにお金を使います。
ちょっと下世話な話に行きすぎましたが、重要なのは製品ではなく情報なんだという点を強調したいだけです。
ネット社会でファッションに関する情報が流通するに従い、勝つのは、役に立つ情報を提供し、その情報を売り上げに結びつけられる企業であり、まさにZOZOTOWNのような企業なわけです。
こういう状況を受けて、ユニクロは、情報製造小売業になると宣言したわけです。
いい製品を作ってその優れた点をいくらアピールしても、そのやり方では勝てないわけです。
SNSを使ってアピールするとか口コミを広げていくとか、そういう話ではないわけです。
ファッションならファッションで、消費者が接する情報のところから消費者に食い込んでいかないと、生き残れないわけです。
ニトリとイケア
やっと家具屋の話に戻ってきました。
大塚家具の騒動を受けて、久美子社長の致命的な失敗の一つとして、高級路線を変更して、裾野を広げ、中価格体の製品の拡充を掲げたことが色んな人から指摘されています。
下記の記事の中ごろに、大塚家具の失敗は、中価格帯、すなわちそこそこの値段でそこそこの品質というニーズの少ないところをターゲットにした点にあるというテレビでなされた分析が紹介されています。
http://netgeek.biz/archives/124436
今の消費者は、安くて良いもの(節約志向)か高くて良いもの(プチ贅沢)の二択だから、中価格帯への進出は筋が悪いと。
言いたいことは分かります。
間違っているとも思いません。
しかし、商品に着目した説明をしようとするところに大きな見落としがある気がするわけです。
上述したようなモノの時代から情報の時代へ大きな流れが完全に無視されているからです。
安くて良いものを売っているニトリとイケアは今のところ成功していますが、もうすぐ帝国の崩壊が始まるはず。
流行に敏感な人と、そうでもない人の差は大きいものがあります。
おそらく、今机の上に、Google HomeやAmazon Echoがある人の中には、今年のプライムデーでは特に何も買わなかったという人も多いかもしれません(私もそうで、最近すっかりアマゾンで目新しいものを買うという経験が少なくなった)。
その一方で、プライムデーは売り上げ記録を更新しています。
ニトリやイケアもそうで、安かろう悪かろうと思ってニトリを敬遠していたけど、結構いいものがあることが分かって、最近になってからニトリを頻繁に使うようになった人もいれば、今月初めてイケアに行って、もっと前から行けばよかったなんて言ってる人もたくさんいるでしょう。
したがって、ニトリやイケアの成長もまだ続くかもしれません。表面的には。
しかし、水面下では、衰退のカウントダウンは始まっているはずです。
机を買う、椅子を買う、ベッドを買う。
こういった購買行動は、間違いなくもうすぐにアマゾンに奪われるはずです。
そこそこの品質の商品なんて誰でも作れるわけで、上述したように、実際に購買した人の感想を集め、それを受けて改良し、おおむね良好という評価が集まる商品を作り、なによりも、既存購入者の利用情報や率直な感想という消費者が一番欲しい情報が集まる場を提供できるのはネット企業であり、モノづくりをメインに据えている企業が、情報収集を本業としているIT企業に勝てるはずがないからです。
そういう情報に精通している「専門知識豊富なセールスマン」なんていうのは今の時代誰も信頼していません。
製品に着目した経営から、それを取り巻く情報に着目した情報へ転換しないと次の10年を生き残れない。
こういった、大きな時代の流れを掴んで対応する能力こそが上場企業の経営者に求められる能力であり、そういった流れを完全に読めていないことこそが久美子社長の問題点だと思います。
ニトリやイケアに押されていて、その2社が大成功しているからそれらを追随するなんて言うのは、あまりに長期戦略のない行動だと思います。
ニトリやイケアに押し込まれて赤字へ転落して、改革しなければいけないというのは分かるとしても、ニトリやイケアの真似をするのではなく、自分を苦しめているニトリやイケアが追い込まれる時代が来ているという大きな流れを掴んで長期的に対応していく能力こそ経営者に求められていることだと思います。
中国企業に外注すればだれでも作れるような商品を売るビジネスに将来があるとは思えず、あえてそっち側の中価格帯に手を広げたのは、100%間違いでしょう。
そう考えると、ニトリやイケアに押されて赤字に転落しても、高級路線を貫こうとした先代社長は間違っていないと思います。
お家騒動時の直近数年の赤字を受けながらも、既存の方針を貫こうとした先代社長の交代は当然なんていう意見はあまりに近視眼的だと思います。
一般大衆を相手にした標準品ビジネスでは、どうやってもIT企業に勝てるはずがありません。
なので、高級路線にこだわる姿勢は間違っていないと思います。
そこしか生き残る道はないからです。
とは言え、先代社長の匠大塚も苦戦しているらしいですね。
安くて良いのもか、高くて良いものかは違っても、商品をカギにしてビジネスを展開している点は親子で同じ気がしますね。
今は情報の時代なんです(恥ずかしい)。
大塚家具というコミュニティ
ではどうすればよいのか。
個人的には、大塚家具というコミュニティを構築すればいいのだと思います。
私のペルシャ絨毯屋としてのつたない経験に基づくと、インテリアで苦戦しているお金持ちはたくさんいます。
ビジネスで成功して、一等地に大邸宅を作ることになったのだが、如何せんインテリアをどうしていいかわからないという人は結構多いと思います。
で、どうしていいかわからないから、家具屋で紹介されたインテリアデザイナーみたいな人に相談して、まずは基調色を決めましょう的な話になって、清潔感があるのがいいなんてなって、結局真っ白な部屋になるなんて言うのは良くある話です。
良いものがそろっていて綺麗ではあるものの、華やかさがないというか、そういう部屋だと、ペルシャ絨毯とか絵画とかを飾ると変に浮いちゃっておかしなことになるので、もったいないと思うことがあります。
何よりも、自由さを感じない部屋になる。
お金があるんだし、自分が生活する場なんだから、”調和”なんて気にせず、自分の好きなものを遠慮なく並べていけばよくて、一流デザイナーの力量をなめてはいけなくて、高級家具というのは非常によくできていて、主張しつつも喧嘩せず、ただ並べるだけでも、安い家具をどれだけオシャレに並べても比較にならない素敵な部屋になってくれます。
まあ、そこらへんはさておき、何が言いたいかというと、200万円のソファーを迷っている人が本当に欲しいのは、そのソファーの素材とか、作った職人さんがその道何年のベテランかとかではなく、自分以外の200万円のソファーを買った人がどんな家に住んでるかとか、ほかに何を買ったのかという情報なんです。
お金持ちもナンパ塾の生徒も本質は同じで、欲しいのは同じ立場で成功している人の情報なわけです。
家を新築する人の多くは、センスのある人の家を見たくて仕方がないんです。
正にプライバシー情報なわけですが、大塚家具はそれを持ってるんだけどなあ。
高級家具を売ってきた大塚家具には、お金持ちがどんな家に住んでいるのか、お世辞にもハイセンスとは言えない失敗例を含め、大量のデータあります。
これを、大塚家具という閉ざされたコミュニティの中で、プライバシーを保ちつつ共有できる仕組みを作ればよいと思うのですけどね。
なお、そういった情報に精通したプロのセールスマンみたいなのを売りにするのは絶対にやめた方がよくて、情報をそのまま見せることがとにかく大事。
こういった限られた人たちだけからなる情報というのは、IT企業は参入したがらない領域なので(広く薄く機械的な処理の方が圧倒的に効率的なので)、独自に進化させることで、地方からわざわざお金持ちが飛行機に乗って訪ねてくるような企業になれる気がしますけどね。
大塚家具という閉ざされたコミュニティの構築。
これいいアイデアだと思うけどなあ。
おわりに
大塚家具問題について語ってみました。
例にもれず偉そうですが、素人なんで許してください。
大事なことは、大きな流れの中で問題をとらえることだと思います。
そして、その大きな流れというのは、実体のない電脳空間で暴れ回っているだけだと思っていたIT企業がリアルビジネスに殴り込んできていて、製品はあるけど、消費者に届く情報を近コントロールできないメーカーが駆逐されつつあるという現実です。
しかし、IT企業の本質は、オープンでかつ膨大な情報の収集です。
つまり、大量の一般消費者相手にビジネスすることが主戦場で、ニッチなビジネス領域は目指さない。
そうすると、大衆側に近づいた大塚家具と異なり、超高級路線に舵を切った匠大塚は悪くはないと思います。
ただ、自分達の強みは、自分のところでしか買えない超高級家具ではなく、持っているけどまだ見える化されていない、匠大塚を訪れる消費者行動の情報なんだということに気付けるかどうか。
書いてて耳が痛い。
誰か絨毯買ってくれないですかね。
綺麗なんだけどなあ。