プラド美術館展(ベラスケスと絵画の栄光)に行ってきたので待ち時間や感想など

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今のところそこまで話題になっていませんがさっそく見てきましたのでご報告。

感想などを語る前にまず客観情報を。

私が行ったのは3月6日(火)午後2時ごろ。

平日とは言え昼過ぎの一番込みそうな時間に行ったのですが待ち時間なしで入れました。

ベラスケスが7点も来るという結構大型の展示会だと思いますが、まだテレビなどで特集番組が放送されていないせいでしょうか。

そうはいっても、中はそこそこ混んでいて(どの絵の前にも4,5人はいる感じ)、これから日がたつにつれどんどん混んでいきそうな予感がするので、気になっている人は早めに行った方がよいと思います。

ベラスケスのネームバリューもさることながら、内容的にかなり充実しているので、これから人気になっていくのは間違いない美術展です。

なお、私は混雑を予想していたので、あらかじめコンビニのチケットマシン(今回はセブンイレブンのマルチコピー機)でチケットを買っていきました(大人一枚1600円で特に割引はなし)。

美術展で探していくとたくさん出てきて(将来分の前売りもたくさん出てくるので)、結局キーワード検索することになると思いますが、美術展の名称はベラスケス展とかではなく、『プラド美術館展』なので注意。

ベラスケスで検索しても出てくるとは思いますが(多分)。

さて、ここからは素人の主観的な感想。

まず、迫力満点のいい美術展でした。

私は、自称絵画好きのくせに、普段あまり美術館に長居しないのですが(2周とかありえない)、今回は珍しくじっくり見ました。

また、かなり個人的ですが、大好きなスルバランが3枚もみれてうれしかったです。


これが見れます。

ちなみにスルバランというのは下記の絵で有名な人。


これはエルミタージュ美術館の至宝。

やはり、この時期(バロック期でいいかな)の絵は、画家の、俺は芸術家なんだ!という強烈な自負に裏打ちされた迫力のある絵が多いので、知ってる絵も知らない絵も、見ていて飲み込まれます。

大きい絵が多いのも、私のような迫力重視の素人には分かりやすいです。

ボリューム満点で結構疲れますけどね。

大満足でした。

うーん、やっぱり、芸術マインドというか感性みたいなものが乏しいせいか、感想文は難しいですね。

感想文は苦手ですが、にわかを棚に上げて偉そうに語るのは得意なので、以下、興味を持った人向けにこの美術展を解説します。

専門家にはとてもできない、超ざっくりの説明で行きます。

このプラド美術館展、プラド美術館のコレクションの内、ベラスケスを中心とする17世紀のコレクションを集めた美術展です。

17世紀というのは、バロック期のど真ん中の時期だと思います。

バロックというのは、素人美術愛好家泣かせの単語の一つで、いろいろな解説読んでも何のことだかさっぱりわからない単語です。

そこで、私なりにバロック期の絵画をぶった切ると、写実主義(古典主義?)と印象派の間にある時期ということでよいと思います(おおざっぱすぎか)。

写実主義と言えば、ヤン・ファン・エイク。

西洋美術史の本などを読むと必ず出てくる人で、その代表作は、下記の『アルノルフィニ夫妻の肖像』。

この時代は、語弊を恐れずに言い切ってしまうと、絵の巧いやつが偉いという時代で、その時代を代表する超絶技巧派がヤン・ファン・エイク。

下記リンク先の拡大画像を見てもらうとわかるように、背景の鏡の中に、書き手自身を含む部屋全体の逆から見た風景が再現されていたり、鏡の周りにキリスト受難の10場面が彫り込んであったり、細かすぎて虫眼鏡で見ないと伝わらないくらい、とにかく細かく写実的に場面が描かれています。

Wikipediaの詳細画像へのリンク

対象物を徹底的に忠実に再現することが重要で、風景の一つとしての壁に掛かった時計を描くなら、その時計を手に取って、虫眼鏡で見ながら忠実にデッサンすることから始めるような感じでしょうか。

描きたいもの、描かれる対象を、精密に描くことを重視していた時代です。

その結果、非常に無機的で冷たい印象を与えます。

これは15世紀の絵。

プラド美術館展のテーマは17世紀ですが、そこを吹っ飛ばして、400年たって19世紀になって登場してくるのが印象派。

代表作はモネの『パラソルを差す女』。

ここまで来ると、写実なんてどこ吹く風。

この女性が来ているのは間違いなく白いドレスですが、そこには、ピンクや青の色がところどころ塗られています。

もちろん、ドレスがそういう模様だったとか、ピンクのしみがついているとか、そういうわけではなく、太陽の光をいっぱいに浴びた姿を描こうとしているわけです。

足元の草原も紅葉しているわけではないでしょう。

太陽の光は、虹からわかるように、7色が混ざっているのですが、絵の具の場合は7色混ぜると黒になってしまうので、各色をペタペタ塗って、全体として太陽の光を表現しようとしています。

その結果、白いドレスを描くのに白以外の色をたくさん使っているという点で、描かれている対象は、客観的な事実から離れてしまって、まさに単なる印象を描いているにすぎないとなるわけですが、太陽の光に包まれた世界を何とか表現しようとします。

まあ、その結果、もともとは活き活きとした場面を描きたかったはずが、究極的には太陽の光に全部溶けてしまうような感じになり、描かれる対象はぼやけてしまって、あくまで人や場所を描きたかったルノワールは離脱しますし、創始者たるモネなんかは最終的に蓮しか描かなくなるわけです。

さて、バロック期を挟む写実主義と印象派、この両者は異なるようで似ているところがあって、それは、表現方法が問題にされる点です。

特徴としては、ひたすら精密に描くのか、いろんな色をペタペタ塗って光を表現するのかといった感じで、どう描くかに焦点が当てられます。

やっと本題に入っていきますが、その点、このプラド美術館展のターゲットであるバロック期は違います。

確かに、写実主義の延長にあり、印象派に比べるとかなり写実的です。

しかし、画家たちが、「俺たち画家は芸術家であり、日常生活品を作る手先が器用なだけの職人とは違うのだ」という強烈な自負に目覚めた時代です。

つまり、どう描くかではなく、何を描くかという主題に意識が集まる時代なわけです。

文学も絵画も芸術という点では同じで、文章か絵かなんていう表現方法の違いなどは問題にならず、何を描こうとしているか(そしてそれを表現しきれるか)を競う時代です。

その結果、歴史画が上位に位置付けられていました(風景画や静物画は下位のもの)。

したがって、人物画でも、古代アテネの哲学者などが好んで描かれ、しかも、にっこり笑った似顔絵とかではなく、何か考え込んでいるような、高尚な感じで描かれます。

人を描くわけですが、いかにそっくりに書けるかではなく、その人が持っている威厳や知性までしっかり表現できるように競っていた時代なわけです。

なお、その結果として、とにかく精密にデッサンしてそこに正確に色づけしていく姿勢ありきという態度から離れていくので、そういう意味ではまさに写実主義と印象派の間にある時期です。


今回の目玉のこの絵でも子供の王子が威厳たっぷり。

十分写実的ではありますが、焦点は写実の巧拙ではなく、表現したいメッセージのようなものがしっかりあります。

それを、すごく絵の上手い天才たちが、強すぎる自負心を持って描くので、どんな絵もすごい迫力を持っています。

また、写実主義時代に比べると、精密性にとらわれないので、絵はだいぶ活き活きとしてきます。

その時代の絵を集めた展示会ですから、見ていてつまらないはずはなく、大きい絵が多いこともあり、迫力満点の展示会です。

印象派などの絵は、一つ一つを見ると綺麗だななんて思いますが、たくさん見てると、モヤモヤした絵ばっかりで、なんだかなという気になってきますが、そういうことがありません。

絵がうまいなあと感心しつつも、作者の伝えたいものがしっかり伝わる、分かりやすい美術展です。

ところで、この時代、画家のパトロンは大きく3つで、王室、教会、そして大商人等の有力市民です。

なんだかんだ言いながら、画家もパトロンの意向に沿って絵を描き、教会は有力なパトロンでしたから、市民を啓蒙・教化する道具としての宗教画も栄えていた時代です。

また、王室の威光を示すような宮廷画もリクエストに応じてたくさん書かれています。

面白いのが、裸婦の絵。

当時スペインのカトリック教会は裸婦を描くことを猥雑だと言って禁止していました。

しかし、美しい裸婦というのは、「人間としてそれ以上付け加える必要のない理想的な姿」といった哲学的な意味があって、古代ギリシャやローマでは盛んに芸術のテーマなどにされていましたから、古典を大事にする教養人的には、分からなくてはいけないテーマ。

そこで、上流階級の人たちは、こっそりプライベートルームに飾っていましたし、禁止されつつもいろいろな人が描いているわけです。

また、静物画も栄えた時代です。

花瓶やらパンをそっくりに描く静物画なんて言うのは、どう描くではなく何を書くかが重要視される時代においては、絵の巧拙は分かるが、主題に深みが無いので、芸術ではないとして低評価を受けるのもやむをえないものなのですが、時代的には大いに栄えます。

芸術性がないなんて言われてしまうともっともらしいですが、実際見れば分かるように、上手い静物画というのは見るものをひきつけます。


この絵大好きで家にも飾っていますがさすがにこれは来てない(スルバランの静物画でプラド美術館所蔵なんですけどね)。

やはり、静物画がその建前とは裏腹に大いに栄えた背景には、欲しがるパトロンの影響もあれば、絵は芸術だなんだと言いながら、絵の巧拙を競う、職人魂のようなものがあるんでしょうね(みんなこぞって粒々のみずみずしさの表現が最高難易度のブドウを描く)。

そんな感じで、この時代、大きく3つの軸があります。

1.画家が芸術家としての自負に大きく突き動かされる時代。
2.とは言いつつも王室、教会、市民というパトロンの影響で様々な絵が描かれる時代。
3.写実主義から徐々に離れていき、絵が冷たい無機的な感じからダイナミックな感じになっていく時代。

この3つの軸が、各コーナーの解説で入り乱れるので、ちょっと混乱しがちですが、以上が参考になれば幸いです。

いずれにせよ、今回のプラド美術館展、非常に充実した内容なので、間違いなくお勧めです。

まあ、素人が思い付きで書いたものなので、あまり当てにしないでくださいね。

正確な解説は、公式目録買ってください。


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