ポイント事業が苦戦しているとは聞いていましたが。
Tポイント事業を手掛けるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、恋愛・婚活マッチングサービス、いわゆる出会い系サービスである、D-AI(デアイと読むらしい)という新サービスを始めたようです。
CCC、Tカードデータ活用のマッチングサービス「D-AI」–“夫婦円満度”をAIでかけあわせ
なんとなく予想がつくかと思いますが、Tポイントに紐づく購買履歴やTSUTAYAのレンタル履歴からその人の人物像を予測してプロファイリングデータを作り、独自に集計した円満夫婦のモデルデータを参照して、マッチングするそうです。
もちろん、Tポイント登録者は全員裏側でプロファイリングされているのでしょうが、このサービスに登録した人同士でしかマッチングはされません(念のため)。
まあ、LINEやPaypayはじめ、多数の会社がビッグデータ構築に乗り出している中、本業無しでポイント活動だけやってるTポイントが苦戦しているらしいのは知っていましたが、収集したデータに関して、ここまで露骨な使い方を始めることにびっくりです。
登録情報や購買履歴から、151種類の属性項目(年収、既婚、車のメーカーなど)と、136種類の志向性項目を導き出して、個人のプロファイリングデータを導き出しているようです。
もっとも、それが具体的にはどんなものかと言うと、CCCのデータベースマーケティング研究所所長なる人が下記のようなことを言っているようです。
例えば、28歳の東京在住の女性が、離乳食、おむつ、チャイルドシート、子供向けDVD、などを利用していた場合、かなりの確率で子供がいて、かなりの確率で車を持っていることが分かる。
出典はこちら
データから色んなことが見えてくるなんて熱く語りながら、こんな例を挙げてて悲しくならないのだろうか。
私はTポイントはファミリーマートで何回か使ったことがありますが、よくコーヒーを買うことから、コーヒーが好きであることが分かるということでしょうか。
なんというか、私も、自分の購買履歴や検索履歴が企業に収集され詳細なプロファイリングがされている現状は知っていますし、まあ、時代的に仕方がないのかななんて考えていましたが、それも、AmazonやGoogleの天才データアナリストや最新AIにされているという非現実的でSF的なイメージだったから許容していたのかな。
実際の裏側では、現実的なこのレベルの人達が、「きっとコイツはこういう奴なんじゃないかな」などとデータを見ながら勝手に私の人物像を作り上げながらワイワイやってるのかと思ったら、急に腹立ってきました。
名著『ブラック・スワン』にこういう話があります。
イラク戦争のときの話で、世界情勢の先が読めない状況の中、その日はリスク資産である株価は低迷し、安全資産であるアメリカ国債の価格が上昇していました。
そんな時に、サダム・フセイン拘束のニュースが飛び込んできます。
しかし、それをきっかけにして、マーケットが動くかと思いきや、相変わらず、アメリカ国債の価格は上昇していました。
そして、ブルームバーグがヘッドラインを更新します。
「米国債券価格は上昇中、フセイン拘束はテロ抑止につながらない見通し」
しかし、30分後に、債券価格が下落し始めます。
すると、すぐさまブルームバーグがヘッドラインを更新します。
「米国債券価格は下落。フセイン拘束の影響でリスク資産に魅力」
このレベルのデータ分析になってなければいいですけどね。
特に、アマゾンなりGoogleなどが、収集した無数のデータの中から、サービスごとの特定目的に照らして意味のあるデータを選び出して利用するというのではなく、自画自賛的に自分達の保有するデータからは色んなことが見えるんだという態度で、すなわち、「無数のプールから合目的的に選択されたデータ」ではなく「たまたま入手できただけの限定的なデータ」から、特定の目的に利用するためのプロファイリングデータを勝手な類推に基づいて作ってしまうというプロセスが、順序が逆というか、データサイエンスのようで、サイエンスとは真逆な気がします。
さらに、このマッチングサービス、相手のプロフィールを見て、メッセージを交換したりする段階では、相手の顔や年収は一切わからず、意気投合して相手がペアリング承認してから初めて、相手の顔写真や年収が分かる仕組みにしたとのこと。
既存の出会い系サービスにおける、顔面偏差値重視や年収偏差値重視を変えると意気込んでるみたいです。
データ見過ぎて、人間はまったく見えていないのかな。
もっとも、これだけ個性的なサービスだと、このサービスに登録したという事実それだけで、どんなマッチングしてもある程度相性は良かったりして。
そして、その結果、自分達のデータ分析の正確さが実証されたなんて話に・・・。
因果関係の把握は難しいですからね。
今後の展開に要注目です。