キングダムで学ぶ漢文:史記の白文とその解説:信と王翦その3


前回に続き、信と王翦(おうせん)と蒙恬(もうてん)が登場する部分のその3です。

はじめに

前回に続くその2です。

前回に続き、信と王翦(おうせん)と蒙恬(もうてん)が登場する部分で、史記の白起王翦列伝第十三からです。

まあ、蒙恬はその1にしか登場しませんが、今回は最後に一瞬だけ王賁(おうほん)が登場します。

間違いあったらすみません。

白文

句読点をつけ、地名など一部の固有名詞には振り仮名つけています。

前回の続きで李信の大敗を受けて王翦が出撃するところです。

1. 王翦果代李信撃荊。

2. 荊聞王翦益軍而來、乃悉國中兵以拒秦。

3. 王翦至、堅壁而守之、不肯戰。

4. 荊兵數出挑戰。

5. 終不出。

6. 王翦日休士洗沐、而善飲食撫循之、親與士卒同食。

7. 久之王翦使人問、軍中戯乎。

8. 對曰、方投石超距。

9. 於是王翦曰、士卒可用矣。

10. 荊數挑戰、而秦不出。

11. 乃引而東。

12. 翦因擧兵追之、令壮士撃、大破荊軍、至蘄南きなん、殺其将軍項燕こうえん

13. 荊兵遂敗走。

14. 秦因乘勝略定荊地城邑。

15. 歳餘虜荊王負芻ふすう

16. 竟平荊地、爲群縣。

17. 因南征百越ひゃくえつ之君。

18. 而王翦子王賁おうほん、與李信破定燕斉地。

19. 秦始皇二十六年、盡幷天下。

20. 王氏蒙氏功爲多、名施於後世。

ヒント付白文

1. 王翦はたシテ代李信撃荊。

2. 荊聞王翦まシ軍而來、乃つクシテ國中兵以拒秦。
益=増やすの意味

3. 王翦至、堅壁而守之、不がへんゼ戰。
肯=動詞

4. 荊兵しばしば出挑戰。

5. ついニ不出。

6. 王翦ひび休士洗沐せんもく、而よク飲食撫循ぶじゅんス之、みづかラ與士卒同食。
日=副詞
洗沐=沐浴のこと
善飲食=ご馳走すること
撫循=いたわること

7. (久之)王翦使使役人問、軍中たわむレル乎。

8. こたエテ曰、方投石とうせき超距ちょうきょ
對=対の旧字
投石=石投げ遊び
超距=障害物競走

9. (於是)王翦曰、士卒可用矣。

10. 荊數挑戰、而秦不出。

11. すなわチ引而東。
東は動詞

12. 翦因あげテ兵追之、使役壮士撃、大破荊軍、至蘄南きなん、殺其将軍項燕こうえん
擧=挙の旧字

13. 荊兵遂敗走。

14. 秦よッテ乘勝略定りゃくてい荊地城邑じょうゆう
乘=乗の旧字
略定=攻略平定
城邑=城壁に囲まれた町

スポンサーリンク

15. 歳餘虜荊王負芻ふすう
歳=一年
餘=余の旧字
虜=動詞

16. ついニ平荊地、爲群縣。
縣=県の旧字
平=動詞

17. 因みなみノカタ百越ひゃくえつ之君。
南=副詞
百越=昔の越の人々が散在していた地域

18. 而王翦子王賁おうほんともニ李信破定燕斉地。

19. 秦始皇二十六年、ことごとクあはス天下。
盡=尽の旧字
幷=併(旧字は倂)とは違う字だが同じ意味

20. (王氏蒙氏功)爲多、名しク於後世。
施=「しく」と読む動詞で「ひろがる」の意味

直訳的通訳

1. 王翦果代李信撃荊。
王翦は果たして李信に代わって荊を攻撃した。

2. 荊聞王翦益軍而來、乃悉國中兵以拒秦。
荊は聞く、王翦が軍を増やし来たると、そこで国中の兵を悉く集め、秦に拒んだ。

3. 王翦至、堅壁而守之、不肯戰。
王翦は来たが、塁壁を堅くしこれを守り、戦わない。

4. 荊兵數出挑戰。
荊の兵はしばしば出撃して戦を挑んだ。

5. 終不出。
(王翦は)ついに出てこなかった。

6. 王翦日休士洗沐、而善飲食撫循之、親與士卒同食。
王翦は、日々、兵士を休め、沐浴させ、たくさん食べさせ、いたわり、自分も兵士たちとともに食事をした。

7. 久之王翦使人問、軍中戯乎。
これをしばらく続けた後、王翦は人に問わさせた、軍中は遊んでいるかと。

8. 對曰、方投石超距。
応えて言うには、まさに今、石投げや障害物競走をして言いますと。

9. 於是王翦曰、士卒可用矣。
そこで、王翦は言った、兵士を用いることができると。

10. 荊數挑戰、而秦不出。
荊は、しばしば闘いを挑んだが、秦は出撃しなかった。

11. 乃引而東。
すると、兵を引いて東に進んだ。

12. 翦因擧兵追之、令壮士撃、大破荊軍、至蘄南きなん、殺其将軍項燕こうえん
王翦は、そこで、挙兵してこれを追い、精鋭に攻撃させ、大いに荊の軍を破り、その将軍である項燕を殺した。

13. 荊兵遂敗走。
荊軍はついに敗走した。

14. 秦因乘勝略定荊地城邑。
そこで、秦は勝ちに乗じて荊の地の城邑を攻略平定した。

15. 歳餘虜荊王負芻ふすう
一年余りで、荊王の負芻を捕虜とした。

16. 竟平荊地、爲群縣。
ついに荊の地を平定し、秦の郡県とした。

17. 因南征百越ひゃくえつ之君。
そこで、南方では、百越の君主を征伐した。

18. 而王翦子王賁おうほん、與李信破定燕斉地。
そして(而)、王翦の子王賁は李信とともに燕と斉の地を破り平定した。

19. 秦始皇二十六年、盡幷天下。
秦の始皇二十六年、ことごとく天下を併合した

20. 王氏蒙氏功爲多、名施於後世。
王氏と蒙氏の功績、多大であるとされ、その名は後世に広まっている。

漢文学習メモ

すなわち

「すなわち」にもいろいろあります(区分は難しいですが)。

則ち:一番普通の順接
即ち:前後が直結する場合。「そのまますぐに」「ただちに」など。
乃ち:前後に曲折がある場合(逆説⊂曲折)。「すると」「ところが」「以外にも」など。
便ち:前後が滞りなくつながる場合。「そのまま」「たやすく」「たちまち」など。

項王許之、即帰漢王父母妻子。
項王はこれを認めるとすぐに漢王の父母妻子を帰した。

子長八尺、乃為人僕御
あなたは身長が八尺もあるのに、人の御者をしている。

応声便為詩
求められるや否やたちまち詩を作った。

参考文献

明治書院の新釈漢文大系(88)史記8列伝1