Google Pixel3の目玉はカメラでもAIでもFelicaでもなくTitan Mなのか


ネットでいろいろ探しても同じような記事ばっかりだったので、変な記事は自分で書くことにしました。

はじめに

先日、Googleが新作スマホPixel3を発表し、Google純正スマホとしては3年ぶりくらいに日本でも発売されることになりました。

しかし、12Mシングルレンズのカメラやメモリ4Gとかで、約10万の値段。

正直、HuaweiとかOPPOなら7万円くらいで出せそうな感じで、Google純正とは言えちょっと高すぎじゃないかというのが最初の感想でした。

Appleのようにブランドイメージを大切にしていて、しかもそれを支える熱心なファンがいるメーカーが、フラッグシップモデルをかなり高価に設定してくるのは理解できます。

しかし、Googleももちろんブランドイメージを大切にしていますが、どちらかというと技術オタクの集まりみたいな会社で、iPhoneXSみたいなノリで価格を設定したとは思えないわけです。

そこで、Pixel3にどんな秘密があるのかネットでいろいろ調べるのですが、ネットニュース業界は変わらずの通常運転、金太郎あめ的な記事ばかりで、Googleの製品説明をただコピペしましたみたいな記事がほとんど。

中には詳細なレビューもあったりしますが、延々とカメラの性能について語ったり、既存のスマホの新作と全く同列で解説しているものが多く、PixelシリーズがGoogleのリファレンス機であることに注目した記事というものがなかなか見つからない。

というわけで、なぜこのハードが10万もするのかという疑問について、自分で答えを考えて記事にすることにしました。

なお、私はITの専門家ではないので、そこらへんは寛容に割り引いてください。

最初に結論

結論から言うと、このハードの最大のポイントは、記事のタイトルにもある通り、TitanM(タイタンM)という最新のセキュリティチップを搭載した点にあると思います。

中華メーカーなら7万円くらいの本体を約10万で売るわけですが、もちろん、その差額の3万円分の価値がTitan Mにあるとか、そういう定量評価はできません。

特に、Pixelシリーズの特徴である、OSアップデートがどの機種よりも早く受けられる、その結果最新のAI機能を利用できるなんて付加価値は、そもそもが主観的なものですし、それを言ってしまうと、価値というもの自体が主観的なもの。

要するに、ハード的な特徴として、Pixel3の最大の特徴はTitan Mなんじゃないのとの結論に私が勝手に達したというだけです。

ただ、そうするとPixel3の他にはない特徴、特にiPhoneとの根本的な差が浮かび上がって来る気がします。

Titan Mというのは後で詳述しますが、最新型のセキュリティチップで、これを使うと、オンラインでの決済取引や送金取引などのセキュリティが劇的に上がる可能性があります。

しかし、それが実現するのは、金融機関やカード会社などがこのタイプのセキュリティチップに対応したアプリやオンラインシステムを作って、それがリリースされてから。

そして、この手の次世代型セキュリティチップがPixel3にだけ搭載されている状況で、Pixel3ユーザーだけが利用できるアプリですなんて言って、そんなアプリが作られたり配布されたりすることはないと思います。

したがって、Pixel3にはTitan Mが搭載されていますが、その恩恵を受けられるかというと、後述するようにゼロではありませんが、コアな部分は、この手のチップが広く普及してからです。

そういう意味では、このPixel3、iPhoneのように、価格に見合った最高のユーザー体験を保証するという製品ではない気がします。

しかし、技術オタク集団Googleのリファレンスモデルの名にふさわしく、周りがついてきているかどうかを気にせずに最新の技術を突っ込み、今後スマホはこういう方向に行くんだよという未来図を示すとともに、持っている人には常に最新のAndroid環境を提供するという機種です。

結論としては、ユーザー体験として10万相当かどうかは怪しいですが、最新技術を突っ込んだ結果10万になってしまったという所でしょうか。

もちろん、Google純正プレミアムもあると思いますけどね。

以下、Pixel3の個々の機能を見ていきます。

Pixel3の機能

カメラ

綺麗なようです。

ただ、12Mのシングルレンズという点に、自分達はカメラの性能競争には興味がないという強烈な意思表示を感じます。これ以上レンズ競争したいなら、一眼レフに通話・メール機能でもつけろよくらいに思ってたりして。

カメラのハード的な性能はさておき、AIを駆使してユーザー体験を向上させようとする姿勢は相変わらずで、Top Shotという機能は面白い。

要するにシャッターを押した瞬間の前後を自動的に撮影していて、押した瞬間の写真で目をつむってたりする人がいると、全員が目を開けて笑顔な時点の写真をAIが自動的に拾ってきて勧めてくれるというもの。

まあ、どんなに画質がきれいでも決定的瞬間をうまくとれていなかったそれまでで、そここそがユーザー体験を向上させるポイントであるという視点はその通りかも。

デザインと有機EL

綺麗です。

AI機能

ここは意外と知られていませんが、2つほど非常に面白い機能があります。

まずは、Call Screen機能。これは超便利ではありますが、どこまで利用されるかは謎な機能。

登録していない番号から電話がかかってきたときに、この機能のボタンを押すと、AIが代わりに電話に出て、あなたは誰?用件は何?という質問を相手にして、相手の回答を文字に起こして画面に表示するというもの。

恐ろしい機能です。

ただし、日本語化はまだされていないので、日本ではまだ使えず。

次は、もっと恐ろしい機能で、結構前に発表されてだいぶ話題になっていましたが、ついに実装されるようです。

その名もDuplex。見た方が早い。

1:05秒から。

これは、美容室に電話をかけ、店員と会話をしながら、予約を取るというものですが、電話をかけて話しているのはAIです(この発表がされたときに、対応した店員は相手がAIであることに気付かない可能性があり、非常に失礼ということで倫理問題の議論にまで発展した)。

まあ、これは実際にどこまで利用可能かは怪しいところですが、AIアシスタントも、来るところまで来たという感じです。

もっとも、この機能も日本語対応はまだなので、日本では使えず。

Felica

Felica搭載、すなわちおサイフケータイ機能の日本投入は、あまり大きな意味がない気がします。

キャッシュレス決済の話は大好きなので、Googleの意図を考えてみましたが大した意味はなさそうです。

最新技術をつぎ込んだPixel3を日本に投入するにあたって、メイン購買層は間違いなくIT技術者などのITリテラシーの高い層ですが、おサイフケータイが無いだけでその層への訴求力は相当落ちるだろうということで、追加しただけだと思います。

日本市場攻略に本気を見せたとか、Google Payを日本で普及とか、Googleにそういう意図はないことはないと思いますが、それとPixel3へのFelica搭載は関係ないと思います。

そもそも、この端末をそんなに数売る気が無いと思います。

Titan M(タイタンM)

そして、長くなりそうなので、最後にTitan M。

このTitan M、グーグルのデータセンターで使われているセキュリティチップをカスタマイズしたチップで、法人レベルのセキュリティを個人用端末であるPixel3に搭載という触れ込みでしたが、具体的に何をするのか不明でした。

そこで、登場したのがGoogleの公式ブログの下記の記事。

Titan M makes Pixel 3 our most secure phone yet

Titan Mについて日本語で解説する記事もいくつかありますが、それらはこのブログを翻訳したもので、突っ込んだ記事は今日現在ない気がします。

そこで、自分なりに想像も織り込みつつ解説します。

まず、公式ブログ通りに解説すると、下記の4つの機能があります。

1.ブートローダーの保護
これは、Titan Mがチップ内に最新OS情報を保持し、スマホのOSが起動する度に、そのOSが最新版であることを監視し、侵入したウイルスなどが、OSをセキュリティに問題のある旧バージョンのOSに戻したりしていないことを確認します。

Google純正のPixelシリーズには、OSのアップデートを最速で受けられるという利点がありますが、それと相まって、常に、報告されたセキュリティ上の問題点を克服した最新のOSでスマホが動くことを担保します。

2.ロック画面の保護
画面ロックを解除するプロセスを、このTitan Mという、OSやアプリを動かすメインCPUやメモリと物理的に別の装置であるチップが担当します。その結果、悪意のあるソフトウェアなどを利用してパスワードを盗むのが非常に困難になります。

3.取引の安全性確保
他のメーカーが作ったアプリが、このチップを使うことで、取引の安全性を高めることが出来ます。ここは後に詳述。

4.インサイダーアタック耐性
これは、Titan M自体の改変を、パスワードで保護するというものです。悪意のあるソフトウェアによるTitan Mの無効化が出来ないように設計されています。

以上の4つが、公式ブログで説明されていますが、技術的なすごさはさておき、ユーザー目線だと正直なんのこっちゃという感じです。

しかし、よく考えてみると、3の取引の安全性確保というのがすごい気がします。

Titan M搭載のPixel3は、Android version 9で導入されるProtected Confirmationという機能を利用可能にする最初のスマホになります。

この、Protected Confirmationという機能を理解するには、Yubikeyに登場してもらうのがよい気がします。

Yubikeyってなんだという人もいるかもしれませんが、下記のUSBメモリみたいな装置です。

これは、認証装置なのですが、USBに差して、ボタンを押すだけのシンプルな仕組みです。

Googleアカウントなどにログインするときに、パスワードを入力しますが、そのパスワード情報が流出したら、他人に簡単にログインされます。

これは、パスワードを複数用意していても同じことです。

そこで、パスワードとは別に、yubikeyという装置を使った認証を登録することが出来る場合があります(Googleアカウントもできる)。

これは、IDとパスワードを入力し、さらにUSBにこのYubikeyをさして、そのボタンを押すとログインが可能になるという認証方法で、最大の特徴は、各Yubikeyは固有の番号を持っていて、自分が登録したYubikeyそのものを物理的に持っている人じゃないとログインできなくなるというものです。

まさに物理的な鍵で、パスワード情報が流出しても、自分が登録したYubikeyその物それ自体を持っている者しかログインできなくなる仕組みです。

これと近いものにワンタイムパスワード用のトークンがあります。

これは知っている人が多いと思いますが、下記のようなもの。

1分おきに、6桁のランダムな数字が表示される装置です。

銀行のオンラインバンキングを申し込むと、銀行から送られてくる装置で、オンラインで振り込む際など、自分が登録したパスワードとは別に、この装置に表示された数字を入力しないと、取引が進まず、要するにこれも、このトークンを持っている人のみが、取引を実行できることを担保する製品です。

しかし、最近ちょっと面白いことが起きていて、このワンタイムパスワードもスマホアプリ化していて、どの大手銀行もトークンを配らず、スマホ保有者にはアプリの利用が勧められます。

その結果何が起きるか。

スマホをハッキングされると、ワンタイムパスワードは簡単にバレます。

そして、オンラインバンキングアプリをダウンロードすると、スマホで振り込みができますが、その過程で、通常のパスワードを入力するだけではだめで、2段階セキュリティとしてワンタイムパスワードの入力を求めても、同じアプリ内のワンタイムパスワード機能を見て入力するのは、セキュリティ的にほぼ無意味ということになります。

パソコンでオンラインバンキングをする場合には、ワンタイムパスワード認証を経ることで、パソコンとは別に登録したスマホの現物を持っている人だけが、取引を実行できるという二段階認証が可能ですが、As more processes come online and go mobile (多くの取引がオンラインに移行し、そしてモバイルに向かう)という状況の中、モバイルを利用した取引では、2段階認証が物理的に実現できず、原理的にはスマホを乗っ取られたら終わりという状況になっています。

もちろん、スマホの乗っ取りがそんな簡単な話ではないので、そう心配する必要はないのですが、Yubikeyとかトークンという、その物理装置をそのものを持っている人だけが承認できるというオフラインなセキュリティ機能をスマホ自体に持たせたいのに、アプリを使って代替するとオンライン上にのってしまう点で本質的に筋悪で、アカウントが破られたら、スマホを利用したセキュリティは無効化されるのが現状なわけです。

確かに、銀行口座やクレジットカードの数だけ、トークンを持ちあるくのは不便です。

しかし、だからといって、何らかの機能をスマホアプリで実現しても、それはオンラインの仕組みですから、ウイルスとかに乗っ取られると台無しになるという本質的な弱点があり、その端末それ自体を現実に所持している者だけが取引を実行できるという、トークンやYubikeyを利用するような、オフラインの仕組みをスマホで作りたいわけです。

長くなりましたがそれを実現するために、GoogleはPixel3にTitan Mという、本体のCPUやメモリとは完全に独立で動く、セキュリティチップを搭載したわけです。

この、Titan Mを利用すると、Android 9から利用できるProtected Confirmationという機能が利用できます。

オンラインバンキングで送金するときや、クレジットカードを利用するときに、スマホに、この取引を実行しようとしていますが承認しますかという確認メッセージが表示され、本体の物理的なボタン(ボリュームボタンなど)を押すことで承認することになります。

そして、この仕組みは、Titan Mという独立した別チップを利用して動き、しかも、本体のロック解除もTitan M上で管理され、取引承認もボリュームボタンを押すなどの物理操作に紐づけられているため、遠隔からスマホに侵入したりウイルスをりようしたりして、本人になりすまして承認しようとしても、破ることが物理的にできないわけです。

あくまで、そのスマホ本体を現実に所持し、そのスマホ内のTitan M内に保存されたパスワードを入力して、本体のロックを解除した者にしかできない操作となるわけです。

このようにして、スマホの中に隔離された物理鍵を構築して、オンライン取引に、オフラインのハードウェア認証を導入して取引の安全性を確保しようとしています。

まあ、強盗に銃突きつけられたら全部パーではありますが。

オンライン決済やスマホを利用したモバイル決済に関しては、まだまだセキュリティ上の不安が多くて普及は今一つですが、Googleが目指しているのは、セキュリティ上の不安を払しょくするどころか、スマホを利用した方が安全性が高まる世界であり、クレジットカードなどでは、カード番号をグーグルに登録した瞬間、そのカードを使った決済をするには、店頭でもネットでもいかなる場合でも、特定のスマホを使ったハードウェア認証をクリアする必要が生じ、グーグルにカードを登録した方がかえって安全な世界とかを目指している気がします。

そう考えると、キャッシュレス決済大戦争の中でGoogle Payは後れを取っているかのようですが、One of themとして競争に参加する気はそもそもなくて、根本的な部分を獲ろうとしてるんでしょうね(この視点は別の記事で)。

今回のPixel3へのTitan M搭載は、そのための非常に重要な一歩な気がします。

もっとも、上述したように、そういった機能が利用されるために、これを利用するアプリが普及することが必要で、そのために、前提としてPixel3と同レベルのセキュリティ構造をもつスマホが普及する必要があります。

一定性能以上のハードがある程度普及して初めてサービスの普及もスタートするでしょう。

したがって、Pixel3にTitan Mが搭載されたからと言っても、その真価を体験する日は数年先なんじゃないだろうか。

ただ、この方向で進むのは間違いない気がします。

おわりに

DocomoやSoftbankからも発売されることもあって、結構注目されているPixel3。

しかし、スペックのわりにかなり高価である点を考えるといったい何なんだこのスマホはと思ったのでTitan Mに注目して(かなり食い気味ですが)、自分なりに考えてみました。

やはり、Googleのリファレンス機ですね。

iPhoneと違って、最高のユーザー体験を保証する端末ではなさそうです。

そうではなくて、技術面において、社会がどこまでついて来ているかを気にせずに、最新技術を突っ込んだ「最新のスマホ」であるのは間違いなさそうです。

そういう意味では10万円するスマホなんでしょうね。

それにしても、スマホの中に、つながってるんだけど、つながってない部分を作る。

作ってる人たちは楽しいでしょうね。

下記の記事を参考に自分なりに考えてみましたが、どこか間違ってたらごめんなさい。

Google explains how the Pixel 3’s impressive Titan M chip secures the phone

Google Pixel 3’s Titan M Chip Security Features Detailed

THE TINY CHIP THAT POWERS UP PIXEL 3 SECURITY

Google details how its Titan M chip makes the Pixel 3 so secure


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