もちろん、ウォーレン・バフェットです。
ウォーレン・バフェットと言えば、ビルゲイツに次ぐ世界第2位のお金持ちですが、職業は投資家です。
そのバフェット率いる投資会社のバークシャー・ハサウェイがアップル株を大量に買いました。
まあ、事実上バフェット本人ではなく、その後継者と言われる弟子の一人が仕切った投資らしいです。
そうだとすると、バフェット本人の投資哲学とは異なるのは当然かもしれないのですが、いろいろな憶測を呼んでいますね。
バフェットは、ヨーロッパで虫混入事件が発生して株価が下がった時にコカ・コーラ株を大量買いしたり、クレジットカードのアメックスが不祥事で株価が暴落した時にやはり爆買いしたのが有名ですが、そのような、絶対この会社はつぶれないだろうという会社の株価が不祥事等で一時的に暴落したときにすかさず大量に買う手法で有名です。
最近では、リーマンショック直後の、金融部門が軒並み壊滅的な打撃を受けている時に、ゴールドマンサックスを大量買いして、その投資は今まさに大きな花を咲かせていたりします。
普通は株でもやろうかなと思ったときに、株式投資を始めるという決断が先行してしまい、何買おうかな、何が割安かな、なんて考えて、証券口座を開いた勢い、変な情報に踊らされて知りもしない会社の株を買ってしまうのですが、それでは損するとバフェットは言います。
株をやろうと思ったら、最初にすることは、時が来たらいつでも投資できるお金を用意しておくことだとアドバイスします。
自分が日常生活で愛用しているメーカー、ブランドを見つけ、その中から、この会社がなくなったら世界が成り立たないと言えるだけの会社を見つけ、リーマンショックや不祥事でその会社の株価が暴落するのを待つのが基本方針です。
もちろん、特に大きなイベントが無くても、割安だとか、これは絶対に成長すると思ったら投資もしますが、自分が良く知らない銘柄に投資したり、チャートを見たり電卓をたたいたりして割安かどうかを調べるなんてことは基本的にしません。
それがバフェット流の投資術です。
金融工学的な数式計算が大嫌いで、非常にシンプルに投資をする人です。
今、エアバッグのタカタが苦境に陥っています。
相次ぐ不祥事隠しに、二人三脚で歩んできたホンダがついにキレたらしく、もう駄目なんじゃないかと言われています。
しかし、エアバッグというのは車とセットで作り込んだりするらしく、しかも相当多数のパーツから成り立っており、問題のあった部品だけを他社製に切り替えるのであれまだしも、エアバッグ全体を他社に切り替えるのは自動車メーカーにとって相当な負担のようで、さらに、タカタは業界3位ですから、ホンダなどが急にエアバッグメーカーを切り替えようとしても、業界全体にタカタのシェア相当部分を供給できる余裕がないようです。
その結果、つぶそうにもつぶせない状況であり、今すぐタカタの業績が急落して倒産するリスクは小さいのではないかと言われています。
そう考えると、タカタ株は大暴落していますから、にわかバフェット流の素人投資家は、今こそ買いのチャンスなのではないかと考えてしまいます。
しかし、タカタ製と他社製のエアバッグなんて違いは素人にはわかりませんし、不祥事の度合いがひどすぎて、数年後には本当に倒産するかもしれません。タカタなしで世の中が回るのかどうかはわかりません。
結局、素人投資家は迷うところです。
この点、バフェットが持ってる株というのは、コカ・コーラ、ディズニー、アメックス、ケチャップのハインツ、カミソリのシック等、素人でもその品質が良く分かり、どう考えてもつぶれないだろう、この会社がなくなったら人々の生活が成り立たなくなるという会社です。
そう考えると、タカタなんてバフェット銘柄ではありません。
確かにタカタは売上7000億円を超えるグローバル大企業ですが、バフェットからすれば、「よく知らない会社」に過ぎず、投資対象の候補にすらなりません。
イントロが長くなりましたが、そんなバフェットが、今このタイミングでアップルを買ったというのが大ニュースなわけです。
IT業界というのは浮き沈みの激しい業界で、日本で言えばミクシィなんてそうでしょうが、天下取ったと思ったら、数年で転落なんてことは日常茶飯事です。
最近では、TwitterがSnapchatにとってかわられそうだなんて、だれが予想したでしょうか。
そういったことから、バフェットはIT業界に投資しないことで有名でした(唯一の例外がモンスター企業IBM)。
彼が投資するのは、ディズニーやコカ・コーラレベルのモンスター企業ですから、そこまでの絶対的な覇権力をもつIT企業というのは確かに無いかもしれません。また、IT企業は、ちょっと有名になるとすぐに過熱気味に盛り上がってしまい、常に割高というのもあります。
そのバフェットがIT業界のアップルに投資したニュースを受け、バフェットが方針転換か、なんて言われて話題になっています。
そもそもバフェット本人ではなく後継者が仕切った投資ですし、他の投資と比べて規模が小さいので、お試し感があり、方針を変えたかどうかは何とも言えないのですが、やはり、バフェット流の哲学を承継している人間がいまさらアップルを買ったのはどういうわけか気になります。
もちろん、理由を端的にいうと、アップルが日常生活に不可欠な覇権力を今後ますます持つだろうという予想と、そのアップル株が現在割安だったから、という2点に尽きます。
アップル株というのは、iPhoneの販売台数の減少が最近報告される以前から、最近のiPhoneのアップグレードのマイナー感や、Apple watchの今一つ盛り上がらない感から、株価を大幅に下げています。
非常にシンプルに株価低迷の理由を考えると下記のようになります。
1.先進国でスマホが行き渡り、しかも、機能水準が大多数のユーザーが満足するところまで来ている、つまり、先進国での大幅な買い替えは起きないことから、今後の主戦場は後進国で、主力は低価格スマホになることから、業績をけん引してきたiPhoneが伸び悩む。
2.iPad、Mac等、iPhone以外の製品全般も、市場開拓や機能が充実しきった感があり、今後画期的なアップグレードが起き、出荷増が見込めるようには思われない。
3.Apple watchやApple musicも今一つ先が見えない。
こういった予想から、これまでの絶好調の業績を受けた過熱気味の株価を修正という感も強いですが、将来への不安がぬぐえないと言った感じで、株価が下がっているわけです。
つまり、現在スマホ業界では圧倒的な存在感を誇るアップルですが、今後どうなの?という不透明感で株価が下がっているので、もし、今後も覇権力を持つどころか、ますます成長すると考えれば、今のアップル株は間違いなく割安です。
では、今後アップルはますます成長するのでしょうか。
もちろんバフェットはそうだと思うから投資したのでしょうが、私もそうだと思います、ちょっとズルいけど。
じゃあ、一体に何が今後出てくるのかというと、個人的には、今年か来年かはわかりませんが、おそらくアップルはiPhoneをスマホというくくりではなく、IoTの操作端末という捉え方をしてくるのではないでしょうか。
漫画やゲームでは近未来と言えばサイボーグでしたが、よくよく考えると、悪い奴と戦うために自分が強くなる必要がある人以外はサイボーグになる必要なんてなくて、生身の体のまま、自分の身の回りにあるものを意のままに動かせる、魔法使いとか超能力者のほうが魅力的です。
おそらく、その魔法の杖の代わりとしてiPhoneを位置づけてくるのではないでしょうか。
GoogleがGoogle homeとかいういまいち冴えない商品をAmazonに引っ張られて発表しましたが、何も新しい端末なんて要らなくて、スマホでそれが出来ればそれまでなんじゃないかと個人的には思います。
家の鍵から始まって、照明、サウンドシステム、テレビ等がすべてITで繋がったスマートホームを制御するリモコンのような端末としてiPhoneを位置づけてくるのではないでしょうか。
アップルカーなる車も開発中らしく、もちろんiPhoneで操作します。
iPhoneを通じて鍵の施錠どころか、車を動かし、家も制御します。
スマホで全てをコントロールできる家や車があったとしたら、アップルブランドは強いと思います。本当に我々の生活を支配する企業になるかもしれませんね。
自動運転車はグーグルが相当先行しているイメージですが、ソフトだけのグーグルには、モノを包み込むブランド力が無くて、パッケージソリューション的なブランド力では少し弱い気がします。
あくまで、自動車メーカーが車に搭載するOS的なものを作っているだけでしょう。
グーグルホーム搭載の家、グーグルカー搭載の車といわれても、アンドロイドスマホと同じように、モノ自体は各社が勝手にいろいろな機能を追加して、なんだか統一感のないものになったりしそうで、iPhoneやiMacのような感じで、アップルホームやアップルカーといった、ハードとソフトの両方を包み込む一体感のあるブランドを実現できるのはアップルだけではないでしょうか。
家なり車なり、iPhone以外がそれなりに進化するのを待つ必要があるため、しばらく業績は伸び悩むかもしれません。
しかし、ソフトとハードの両方で強いアップルは、IT業界でも孤高の存在として誰も追いつけないところにいて、当面の業績はさておき、水面下で行われている開発を考えれば、最終的に成長していくとバフェットは確信したのでしょうね。
短期志向な市場が、ここ数年はだめだろうと見越して株価が低迷しており、今こそ買い時だと。
完全に後出しじゃんけんですが。
いずれにせよ、SiriとApple watchは始まりつつある未来のほんの一端なんでしょう。
ただ、ソフト部分の核となる、アシスタント機能と人工知能に関しては、Google Nowをはじめとしてグーグルがやっぱり先行しているのかな。
それにしてもすごい未来が近いうちに来そうです。
わが国でも、よく成長戦略なる単語を聞きますが、GDPがどうのこうの言ったところで、成長とは究極的には、生活が便利になるとか、出来なかったことが出来るようになることを意味するわけですが、そう考えると、来るべき未来の主導権は完全に握られているような気がしていて、割って入る余地あるんですかね。
資本主義が進行してグローバル化が進むと超巨大企業に世界が支配されると言ったのはマルクスだかレーニンだか忘れましたし、プロセスは全然違うのかもしれませんが、結論としてはあってるのかもしれませんね。