Paidyを悪用した詐欺が横行


これは詐欺師もアウトだけど、Paidyもアウトでしょう。

読み方はペイディーです。

なお以下で私は、有力金融ベンチャー企業を大いに批判しますが、私はいい加減なデタラメを偉そうに言うことで有名なので、くれぐれも内容を鵜呑みにしたりしないようにご注意ください。

数日前から話題になり、一昨日にニュースで報道されましたが、後払いサービスのPaidyを悪用した詐欺が横行中とのこと。

「メルカリが詐欺師の実験場に」後払いサービス「Paidy」使ったフリマ詐欺被害者続出

結論を言うと、手法を思いついた不届き者もダメですが、これに関しては、Paidyという会社がやっている手法はアウトだと思います。

私は、Paypayにしろ、7Payにしろ、新興企業の不祥事には結構寛容な方で、どちらかと言えば、最近は社会の方が保守的過ぎて、新型サービスをちょっと叩きすぎなんじゃないの?というスタンス。

でも、このPaidyはない。

ありえない。

今回の事件において、被害者の「被害」を作り出しているのは、詐欺師ではなく、このPaidyという会社の気がします。

まず、このPaidyというサービスは、流行りのキャッシュレスサービスに分類することも可能ですが、なんちゃらペイとは少し毛色が違って、後払いのサービスです。

つまりクレジットカードに代わるもの。

使い方は非常にシンプルで、Amazonなどの通販サイトで商品を購入する場合に、支払い方法としてPaidyを選択。

そして、立ち上がったPaidyの画面に、メアドと電話番号を入力すると、その電話番号宛てにSMSで認証番号が送られてくるので、送られてきた認証番号を入力すれば決済完了(つまり、SMS認証で成りすましは回避)。

では現実の支払いはいつ行うかと言うと、翌月初にコンビニ払い用の「支払い番号」もしくは「振込先口座情報」がメールで送られてくるから、10日以内に、コンビニで支払い番号使って支払うか(ファミポートやLoppiを利用)、指定の振込先に振り込むという方法(なお銀行口座を登録することで引き落としも可能)。

後払いという点では、クレジットカード利用と大して変わらないのですが、メアドと電話番号だけで利用できる簡便さに加え、利用の都度SMS認証があるため不正利用セキュリティが固い点と、会社自体が余計な情報を持っていないのでカード情報や氏名住所と言った個人情報の流出などの心配がない点で、既存のクレジットカードと比較して利点しかないと言っても過言ではないと思います。

シンプル過ぎて怪しいという疑問はもっともですが、クレジットカードと言ってもスマホ時代には物理カードは不要で、カードがあるからスキミングされたりカードを不正利用されたりするし、また、余計な情報を持つから流出するわけで、Paidyのやりたいことは分かりますし、未来を見据えた仕組みと言えます。

でも、この仕組みを聞いた人なら誰でも、では利用者が翌月の10日までに支払わなかった場合どうするんだろうと疑問に思うと思います。

そして、そここそが問題であり、カード会社だって、なにもたくさんの個人情報を意味もなく持ってるわけではなく、引き落としができなかったときに、しっかり取り立てる必要があるからこそ、氏名・住所・勤務先などをしっかり把握しているわけです。

では、Paidyはメアドと電話番号だけでどうするつもりだったのか。

債権回収のトータルな方針は分かりませんが、利用者が期限内に支払わない場合の債権回収方法の一つとして、なんと、商品の送付先に、請求書(振込用紙)を送付していたようです。

これが、信じられないというか、ありえない。

債権回収用の情報をろくに収集せずに与信を与えて、勝手に自爆するのは結構ですが、だからと言って、債務者ではない可能性のある人に請求書送りつけて、支払わせようとする姿勢がありえない。

そこを熱く語りたいのですが、その前に今回の詐欺の手法を説明します。

まず、詐欺師はメルカリにiPadなどを出品します(匿名配送は利用しない)。

しかし、手元に商品はなく、メルカリに載せる写真はアップルのHPなど、ネットから拾ってきた写真を使った架空出品です。

そして、メルカリ上で商品が売れれば、急いでアマゾンなどで商品を買い、購入者の住所宛に送付します。

購入者としては、メルカリで買ったのに、商品がアマゾンから直接送られてきたぞと不思議に思うわけですが、まあいいかとメルカリ上で受取の完了処理すると、詐欺師の方にメルカリから売上金が振り込まれます(購入者側はクレジットカードなどで購入時に決済)。

そしてこの話の肝は、詐欺師の方では、アマゾンで購入するときに、支払い方法はPaidyにして、もちろん、翌月初に支払いなどせずにトンズラするという点です。

そうすると、翌月の10日以降に、メルカリ購入者(商品受取人)の方に、Paidyから、代金を払ってくれと振込用紙が届くというもの(つまり、購入者側が焦って支払ってしまうと二重払いになる)。

まあ、メルカリ詐欺師たちは相変わらずよく考えるなと感心してしまいますが、一番あり得ないのは、Paidyのやり方。

何が問題かって、よくよく考えてみると、詐欺師が不当に利益を得ているのは、Paidyが債権を回収する方法をろくに用意もせずに与信を与えたせいでトンズラできたからである一方、被害者において二重払いという被害が発生しているのは、Paidyが債務者でもない被害者に請求書を送ったからです。

詐欺師と二重払い被害者の間で、Paidyがかなり重要な働きをしています。

つまり、Paidyが被害者に請求書を送らなければ被害は発生せず、単にずさんな与信管理を行った金融ベンチャーが自爆しただけであり、すなわち、このPaidyという会社における、債務者かどうか確認もせずに請求書を送って支払いをさせようとするオペレーションが二重払いという詐欺の被害を作り出しているのわけです。

スポンサーリンク

まず、Paidyから請求書(振込用紙)が送られてきたメルカリ購入者(商品受取人)に、支払い義務があるかと言えば、あるわけない。

そもそもPaidyとメルカリ購入者の間には何の契約もない。

契約が無ければ債務なんて負うはずがないというのが大原則で、自分の知らないところで、他人がどんな契約をしたところで、自分が承認していない債務を負うことはありません。

もっとも、不当利得という概念もあって、要するに、頼んでもないのにピザの出前が家にきて、送付先を見ると隣の部屋になってるのだけど、ラッキーと思って受け取って食べていたら、5分後にピザ屋がすみませんと言って回収に来た場合。

この場合、契約が無くてもピザの代金を支払わなくてはいけなくなるのは常識的に考えて当然で、この何の理由もなく食べてしまったピザのことを不当利得と言い、不当利得を得た人は、どこかに必ずいる、不当に損をしている人に、利得を返還しなくてはいけません。

しかし、上記のケースの場合、不当利得もない。

メルカリ購入者としては、メルカリを通じて売り主(詐欺師)に代金を支払い、その代わりに、アマゾンを経由しているとはいえ、売り主(詐欺師)から商品を受け取っており、つまり、代金を支払って商品を入手しているわけで、誰かに返還するような不当な利得もない。

Paidyは代金を取りっぱぐれていますが、それは与信管理が甘いからであって、Paidyの不当な犠牲の上に、商品受取人が不当な利益を得ているとは思えません。

したがって、メルカリ購入者(被害者)がアマゾンから送られてきた商品を開封して使ってしまったとしても、Paidy利用者(詐欺師側)がPaidyに代金を支払っていないなんて事情は何の影響もなく、Paidyに支払う義務は一切ないです(詐欺師側がアマゾンでPaidyで買ったのか、クレジットカードで買ったのか、コンビニ払いで買ったのかなんてそもそも知りようないし)。

そして、この話の核心は、Paidyにおける、利用者が代金を支払わない場合には、商品の受取人に請求書を送るというオペレーションです。

このオペレーションは、上記のメルカリを利用した特殊な詐欺の場合だけ不適切なオペレーションになるのではなく、そもそもおかしな債権回収方法なのがポイントです。

今回のケースは想定外だったのではなく、そもそもがおかしい運用だと思います。

例えば、上の複雑な事例ではなく、AさんがアマゾンでPaidy利用で商品を買い、それをBさんに直送する形で、転売したもくしはプレゼントしたが、Aさんは期日までにPaidyに代金を支払わなかった場合だって、PaidyがBさんに代金を請求するなんてできる訳ない。

クレジットカードで買った商品を転売したりプレゼントした場合で、購入者がカード会社に支払わなかったからと言って、カード会社がプレゼントされた方や転売購入者に代金を請求するなんて聞いたことないし、認められるわけない(もちろんグルだったら別の話になりますし、厳密には、完済し終わる前の転売や譲渡自体は規約違反なんでしょうけど、それ言い出しても、各種プレゼントをカードで買うことなんてカード会社自身が事実上放任していますからね・・・)。

ツケ払いだから、所有権留保特約も当然についているでしょうけど、(登記のある不動産や登録制度のある自動車や船とは違って)小物の場合相手はそんな事情知りえないわけで、即時取得している可能性が高いのだから、商品の返品や代金相当額の支払を求めるなんて、プロの金融機関としては特別の事情がない限り許されるはずがない。

また、商品受取人がPaidyの損失の下で不当に利得を得ているというケースが考えられなくもないですが、そもそものPaidyの損失が、自らのずさんな与信管理という自爆行為ですから、Paidyによる契約外の第三者への請求というものが認められるケースは少ないと思います(ないとは言ってない)。

もちろん、多くの場合には、利用者と商品送付先は同じなんだろうけど、私も実家にアマゾンで購入したものを送ることはしばしばありますが、そういったギフトの場合など、購入者(Paidy利用者)と商品の受取人が異なることは、決して珍しい事態ではないと思います。

にもかかわらず、利用者が払わないからと言って、商品受取人に請求書を送って、支払い義務の無い者に金を支払わせようとするというのは、かなり悪質。

つまり、Paidyというのは、甘々の与信管理をしておきながら、債務者が支払いをしない場合に、商品受取人はそれなりの確率で債務者本人ではない可能性があり、しかもその場合の殆どの場合で、その人には何らの請求も認められるはずないのに、ろくに確認もせずに請求書を送付し、相手の法的無知と心理的動揺に付け込んで、義務の無い者に支払いをさせようとしていたことになります。

こんなことを業務としてやっているというのが信じられない。

架空請求詐欺と大して変わらないと言って良いと思うのですけどね。

Paidyを悪用した詐欺が横行と言うので見てみたら、確かにメルカリとPaidyを組み合わせて悪用する詐欺師も悪いのですが、それよりも、Paidyのやってることの悪質性の方が気になります。

HPを見る限り、それなりの経験を持つ人が集まったベンチャー企業といった感じで、大手企業もこぞって投資しており、小さな会社ではなく、大型のベンチャー企業ですが、一体何をやってるんでしょうか。

金融庁どころか、検察が動いてもおかしくないような案件だと個人的に思うのですけどね。

相手が債務者ではない可能性がそれなりにあるのに、一方的に請求書を送って払わせようとするって、架空請求詐欺と何が違うのだろうか。

ダメでしょうこれは。

それとも私が何か見落としたり間違えたりしているのかな(一気に書いたので急に不安になってきた)。