ネタがないので、備忘録。
はじめに
昨日、池上さんの番組を見ていたら、言葉の話をしていて、値引きをするときに「勉強する」という言い方をする理由を説明していました。
その中で、「勉強」というのは、もともと「嫌なことを頑張ってする」という意味であるという話をしていて、へーと思ったので、自分で調べてみました。
最近、更新してないので備忘録がてらメモします。
勉強の意味
勉強という言葉を辞書で調べると大きく3つの意味が載っています。
1.精を出してつとめはげむ
2.学問や技術の習得にはげむ
3.商人が値引くこと
1番の「つとめはげむ」が本来の意味で、現代的な「学問をする」という意味で勉強を使うのは日本の明治以降の用法のようです。
「勉強」は中国語としても通用し、中国でも、努力する・はげむという意味で使用するようですが、「やりたくないことを頑張る」、「自分に鞭打って努力する」というニュアンスがあり、「不本意ながら」とか「嫌々する」という意味が含まれているようです。
そして、努力の対象は学問に限られますから、日本のような「学校でのお勉強」という意味では使われず、対象が何であれ、「不本意ながら頑張る」という意味で使われるようです。
これだけでも、値引き交渉時に使うのは、本来的な意味に近い使い方のような気がしますね。
勉め強いる・強いて勉める
まず、ネットで調べると、強いて勉めるとか、勉めることを強いる、なんて説明をしたうえで、上述の原語義を説明しようとしているものがたくさんあります。
意味的に間違いとは言い切れないのですが、語義の分析としては間違っていると思います。
まず、漢語(漢文)では、目的語は動詞の後だし、副詞は動詞の先。
書を読むのであれば読書と書きますし、常に用いる漢字は常用漢字です。
したがって、勉めることを強いるとか、強いて勉めるという意味であれば必ず「強勉」と書かなくてはいけません。
(駅にある「券売機」なんていうのは完全に和製漢語で売券機と書くのが漢語的に正しい)
なお、勉め強いる、と読むのは意味不明。
とすると、「勉強」は勉める強める(ツトめるツトめる)という、似たような意味を重ねた熟語なんだと思います(救助、柔軟、優勝、停止などの仲間)。
ということで、「勉」の字と「強」の字を調べてみました。
これが面白かったのでこの記事書いてます。
勉と強
まず、勉という字。
これは、親にあたる字は「免」という字でなんとこれが象形文字。
「免」は女性が出産する様を描いた象形文字で、分娩の「娩」であり、狭い産道から無理をおかして出るという意味をもつ。
そして、「勉」は「免」+「力」なので、「力んで無理をする」というのが原義だそうです。
続いて、「強」。
これは、「彊」という字に「虫」を足して、面倒な部分を省略した結果「強」という字になったそうです。
ややこしいですが、本来は「彊」という字こそが「強い」という意味で、「強」=「彊」+「虫」で、甲羅の硬い虫、コクゾウムシの意味だったそうですが、後に「強」が「彊」の代わりに用いられるようになり、すなわち、「強」が「強い」とか「強いる」という用法で使われるようになったそうです。
したがって、「強」の本来の意味は「彊」をたどる方が正しいことになります。
そして、「彊」というのは、「強い弓」の意味で、本来「強い」という意味を持つのは「彊」の右側の方(単独の字として存在しない)。
これは、漢和辞典としては独自説が強くて有名な学研の『漢字源』によると、字の通り、田んぼの間に線で境界を明確にすることを意味し、「けじめを明らかにする」という意味だそうです。
以上が、勉と強のオリジナルな字義です。
まとめ
こうやって「勉」と「強」の字の原義に当たると少し意味が見えてきました。
「勉強」とは、「力んで無理する」+「けじめを明らかにする」となりますから、「はげむ」と言えば「はげむ」なんですが、「自分に鞭打つ」とか「やらざるを得ない」といったニュアンスがあるんでしょうね。
しかし、そこで、「勉強」というのは元々は「嫌なことを不本意ながらする」という意味であると割り切ってしまうのは、言葉足らずかもしれません。
まず、「勉」という言葉には、「力んで無理する」という意味はありますが、価値の高いものを生み出すためにという目的意識があります。
また、「けじめを明らかにする」という点も、「義理ほどつらいものはない」と日々感じている日本人の私としても、「義理返し」の本質を「嫌なことを不本意ながらする」ことにあるなんて言われると反論したくなり、「しなくてはいけないことをきっちりこなす」ことこそが本質であって、本当は嫌だという感情面に焦点をあてないでほしいなと思います。
以上を考慮すると、「勉強」の語源的な意味は、
「大いなる目的のためにすべきことにはげむこと(楽しいかって聞かれたら楽しくないけど)」
という意味になるかと思います。
したがって、値引き交渉時に「もう少し勉強してよ」というのは、非常にオリジナルの意味に沿った使い方だと思います。