セブンイレブンはなぜバーコード決済を導入しないのか


セブンイレブン離れが起きているようです。

はじめに

数日前、「セブンイレブン離れ」という言葉が話題になっていました。

最近、LINE Payまで20%還元を始めたので、LINE PayとPaypayを使いたい派は、セブンイレブンを避けて多少遠くてもファミマやローソンに流れる動きが加速しているようです。

あなたはセブンイレブン離れ、してますか

まあ、正確に言うと、セブンイレブンにおいて、LINE Payを使う方法はいくつかあるので(おサイフケータイかプラスチックカードが必要ですが)、「セブンイレブンでLINE Payが使えない」というのは間違いなのですが、セブンイレブンはバーコード決済には対応していないので、LINE Pay、Paypay、Rakuten Payの3つは使えないと言っても大嘘ではありません。

もっとも、上記の記事でも、わざわざ遠くのファミマやローソンに行く人まで大量に発生しており、一部店舗では明らかに売り上げが減ったなんて報告まで出ているのに、なぜセブンイレブンは今流行りのバーコード決済(QRコード決済)に対応しないのかという疑問が上げられていますので、その理由を考えてみます。

<5月22日に下の記事追加しました>
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nanacoがあるから

第1の理由は、nanacoがあるから。

まあ、「なぜセブンイレブンがバーコード決済を導入しないのか」という問いに、「nanacoがあるから」なんて言えば、頭の悪い学生の実験レポートの考察欄のようで恥ずかしいですが、外せません。

nanacoのシェアが落ちるのを阻止しているのだと思います。

それくらい流通系にとって、自社発行電子マネーは美味しいビジネスです。

この記事を書くにあたって、企業側から見た独自電子マネー発行のメリットをネットでちょっと調べてみました。

すると、いくつか記事が見つかり、小銭管理からの解放、レジがスムーズになり顧客満足度向上、顧客データの管理・分析の精緻化、ポイント利用によるカスタマーロイヤリティの確保なんて話が載っていました。

それらがメリットなのは間違いありませんが、一番のメリットは違うと思います。

キャッシュフローの改善だと思います。

イオンなりイトーヨーカドーが新店をオープンする。

そして、大々的にオープニングセールをして、お客さんが殺到します。

そして店内の一角にはのぼり広告と机が並べてあって、nanacoとかWAONの入会キャンペーンをします。

そうすると、顧客側のちょっとした高揚感も手伝い、老若男女問わず多くの人が、これを機に電子マネー作ろかななんて言って、カードを申し込んで、数千円をチャージします。

たぶん、オープニングセール期間の新規発行時のチャージ代金だけで、新規出店費用くらいペイするはず。

小売りにおいては、先に仕入れて売るわけで、支出が先で収入が後という流れが基本ですが、電子マネーはそれを逆転させます。

規模に依らず、収入が先行するというのは企業側から見ると非常に大きなメリットです。

何より、電子マネーの場合、預かっても利息をつける必要がないですからね。

よくよく考えるとこれは非常に馬鹿げた話なんですけどね。

また、数百円くらいの残高を残したまま使わなくなる人も多く、どのタイミングで収益にするのかは知りませんが、チリも積もればで、結構おいしいはずです。

以上より、PaypayやLINE Payが流行って、nanacoのプレゼンスが落ちるのを避けるという意図はあると思います。

また、定期的にnanacoにチャージしている層が一斉にチャージしなくなったらそれなりのダメージがあるはず。

新規「nanaco利用停止者」の発生を最小限に食い止めようとしているのだと思います。

購買データは渡さない

2つ目は、顧客の購買データです。

LINE PayやPaypayといった、バーコード決済勢、まあ、QRコード決済勢と呼んだ方が通りのいいのかもしれませんが、彼らは中国のアリペイを非常に参考にしています。

中国において、アリペイはピッとやるタイプのNFC決済をそれなりの戦争の末に下して、キャッシュレス決済の覇権を握っています。

決め手は、NFCがピッとやるという「点」としての決済のことしか考えていないのに対し(それだけで決済手数料の分け前を巡って回線会社、端末会社、決済会社で大揉めになる)、アリペイは単独で動き余計な折衝を避けて、サービスの開始から終わりまでの消費者行動全体を改善することを心掛けたからです。

アリペイは、食べログやホットペッパーのような機能を内蔵・進化しています。

つまり、スマホから店を予約して、テーブルのQRコードを読み取ってお会計するだけでなく、テーブルのQRコードを読み取ると、自分のスマホから注文までできます。

そうやって様々な店舗を巻き込みユーザーの利便性をあげる一方で、ユーザーの詳細な行動履歴を把握し、それを加盟店に還元して、加盟店のマーケティングに役立つ情報を提供しています。

これは、卵と鶏の関係でもありますが、アリペイの強みは、ユーザーの行動履歴というビッグデータを確保して、加盟店に還元しながら強力なwin-winの関係を築いていることにあります。

そして、そのビッグデータを片手に様々な消費者金融や保険や信用スコア事業で様々なイノベーションを起こしいます。

つまり、アリペイは決済企業ではなく、データ企業です。

これを研究し尽くしているLINE PayやPaypayも決済企業で終わる気は毛頭なく、決済を軸にユーザーの行動履歴を集めて、様々なビジネスを展開しようとしています。

彼らもアリペイ同様、データ企業になろうとしています。

最近ではGAFAという単語が流行りで、googleとかAmazonに私たちの行動情報が収集・利用されていて、このままいくと、GAFAに世界が支配されるなんて意見を見たりします。

まあ、不安は分かるのですが、現状、彼らはしょせんオンライン企業とも言えます。

BtoC物販のオンライン比率は伸びてるとはいえ、まだ物販全体の5%ほど(アメリカと中国でも15%ほど)です。

つまり、日本においてはいまだに物販ですら95%がオフラインで行われており、消費者のオフライン生活での行動データの大規模な収集は未踏領域で、そのデータを将来欲しいからこそ、Amazonはコンビニはじめたりスーパー買収したり決済にも参入したりしているわけです。

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そして、中国のアリペイはそこを取ったからこそ世界でおそれられているわけです。

また、これからはサブスクリプションの時代なんて言って、NetflixやAmazon Primeのような月額課金型のサービスが全盛です。

サブスクリプションの時代と言っても、月額課金が大事なわけではなく、従来の、商品・サービスありきでそれをどう売るかを考えるプロセスではなく、顧客本位の視点でビジネスを展開することが大事と言われています。

一部のコレクターを覗き、客が車を買うのは所有したいからではなく運転したいからであり、DVDを買うのも所有したいからではなく見たいからです。

これからは、そういった視点でビジネスを展開して、顧客と継続的な関係を構築・維持していかないと生き残れないと言われています。

ディズニーのCEOは、優秀なコンテンツをたくさん持っていても、自分達が顧客へアクセスできるのはディズニーランドくらいしかなく、ディズニーのファンと直接つながっているのがNetflixやAmazonや映画館であることに非常に焦っているようです。

そういったビジネスの転換期において、セブングループは、利用者にとって地域行動の重要な生活拠点とも言えるコンビニ・スーパーを持っているわけで、その「場」を利用して今後顧客とどうやって長期安定的な関係を構築・維持していくかと頭を悩ませている時に、自分達の財産ともいえる「場」内での顧客行動データをやすやすと新興IT企業に渡してなるものかという思いがあるんだと思います。

こうやって考えると、LINE PayやPaypayユーザーからすると憎いセブンイレブンですが、セブンからすると、ファミマやローソンこそ、セブンに落ち着け追い越せといった2番目戦略に徹するあまり、コンビニ業界の財産ともいえるものを簡単にIT企業にくれてやって、一体何してくれてんだという思いかもしれません。

ITがいくら進歩したところで、国民のほとんどが家から一歩も出ないで生活する日なんて来るわけはなく、むしろイベントビジネスはますます活性化している中、コンビニを地域のコミュニケーションハブ的な場に発展させ、多くの企業がそこでサービスを提供するという意味でプラットフォーム企業になりたいのに、中国のように、アリペイというプラットフォーム上でコンビニがプレイヤーとして割引・クーポン合戦のような泥沼競争させられる環境になったらたまったもんじゃないからです。

セブンイレブンやイトーヨーカドーでの消費者行動データを野心ある新興データ企業にやすやすとわたしてなるもんかと思っているのだと思います。

セブン銀行の存在

3つ目は、セブン銀行の存在です。

セブンイレブンがバーコード決済に抵抗する理由の一つとして、セブングループの稼ぎ頭の1つでもあるセブン銀行の存在は大きいかもしれません。

セブン銀行というのは、銀行ではありますが、顧客から預金を集めてそれを投融資して稼ぐのが本業ではなく、ATMビジネスがメイン稼業で、他の金融機関からの手数料で設けているという面白い銀行です。

つまり、ATMというのは設置にそれなりのコストがかかるわけですが、全国にあるセブンイレブン内にATMを設置し、そこで様々な銀行が相乗りして利用できるようにすることで、他の銀行とWin-Winの関係を築きつつ、手数料をもらうというビジネスです。

ただ、ATMというのはキャッシュレス社会においては無用の長物というか、現金派のためのものです。

いま、世間では、キャッシュレス決済に関して、様々な規格やサービスが乱立していると言われています。

スマホ決済、QRコード決済、NFC決済など、カテゴリーなんだかサービス区分なんだか性質のよくわからない単語が世間をにぎわせていますが、本当のところ、それらは全て決済インターフェースの話であり、決済方法の区分ではありません。

決済には、現金型、デビット型、クレジット型の3種類しかなく、それ以外のQRコードやNFCや電子マネーなんて言うのは間に介在する技術の話でしかありません。

したがって、厳密な話をすると、電子マネーの普及が真の意味でキャッシュレス決済の普及につながるのは怪しいです。

例えば、先日安倍首相がキャッシュレス化推進のアピールなどといって、戸越銀座でnanacoを使っていましたが、レジで3000円チャージして、nanacoで商品を購入というのは、どこかで現金の登場が避けられない現金型の決済で、それがどれだけ流行したところで、現金は世の中から消えません。

おサイフケータイで電子マネーを利用する場合はちょっと違うわけですが、Suicaやnanacoの利用率が上がっていると言っても、ほとんどの人が現金でチャージしている現状では、「本当に」キャッシュレス化が進んでいるといえるのかどうかは怪しいです。

そして、セブンはnanacoを一生懸命普及させようとしていると言っても、アプリ上でnanacoに各銀行口座から直接チャージできるようにすることは、セブン銀行を潰しかねない行いですから絶対にしません。

つまり、セブングループの稼ぎ頭でもあるセブン銀行というのは現金型決済を前提としたビジネスモデルです。

その点、LINE PayやPaypayのように、銀行口座を登録して直接そこからチャージするというデビット型が普及すると、セブン銀行のビジネスモデル自体が破綻するわけです。

そういった経緯から、セブンではバーコード決済勢への協力を拒んでいるのだと思います。

手持ち現金がない場合に、そうだLINE Payにオンラインでチャージしよう、なんていうのはセブンの店内では絶対させない、そういった場合は店内のATMで現金おろせと。

おわりに

セブンイレブン離れというニュースが話題になっていたので、セブンイレブンがバーコード決済に対応しない理由を考えてみました。

思いつくままに3つほど書いてみましたが、どれも大きな流れに逆らうには弱い感じですね。

単に後手後手に抵抗しているだけ感は否めません。

今年中にセブンペイなるサービスを開始するらしいですが、キャッシュレス社会到来に伴い役目を終えそうなセブン銀行が、これまで提携してきた金融機関を巻き込んでどんなサービスを提供できるかに要注目ですね。

こんな記事書いた途端に、利用開始を表明したりして。

十分にありうる気がします。

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