日産のゴーン会長逮捕:久しぶりのザ・地検特捜部


すごいニュースが飛び込んできました。

はじめに

日産自動車のカルロス・ゴーン会長が逮捕されたというすごいニュースが入ってきました。

記者会見も見てないし、まだ情報が少なくて全然詳細は不明なのですが、適当なこと書くなら情報が少ないうちの方が言い訳しやすいので、今書いてしまいます。

容疑は金商法違反ですが、その内容は、有価証券報告書に記載した役員報酬の金額が50億少なかったというもの。

これは要するに私的流用が50億あったということなんでしょうが、おそらく経理周りに詳しくない人は良くわからないと思うので解説してみます。

その後、例のごとくデタラメな妄想を書いてみたいと思います。

(20日夜に少し修正しました)

給与とは

具体的に話します。

知らない人も多いかもしれませんが、会社の福利厚生で、バークレーバウチャーという制度を利用している人もいるかもしれません。

これは、毎月給与から3,500円天引きされるのですが、そうすると会社も同額負担して7,000円の食事券を毎月くれるという制度。

3,500円の負担で、コンビニや大手レストランチェーンでも使える7,000円分の金券をくれるので採用している会社では基本的にみんな利用する制度です。

これ、非常にいい制度なのですが、金額を増やしたりは一切できないことになっています(7,000円以内なら減らすことはできる)

しかし、なぜ合計7,000円で、従業員負担は3,500円なのか。

実は、税法上にしっかり決まりがあって、食券の支給型の福利厚生は、合計7,000円以下で、かつ、本人が半額以上負担している場合は、会社負担分を給与として扱わないよというルールになっています。

もし会社が8,000円の食券を従業員に福利厚生として与えた場合、会社負担分の4,000円につき、会社としては従業員のための福利厚生費として会計処理していても、税務調査でこれは福利厚生費ではなく給与だよねとやられます。

そして、従業員への給与ということになり、会社としては、その食券代の所得税分を源泉徴収して翌月に税務署に納付しないといけないことになります。

他にも、従業員だけで行った食事会の費用を会議費とか交際費とかで経費申請をして、こんなの会社が負担するわけねーだろと経理部から大目玉をくらったことは誰にもあると思います。

しかし、仮に会社が良いよと言って精算してあげても、税務調査で、こんなの会議費や交際費にしちゃダメだよ、交際費は経費にならないとかそういう以前に、こんなの会社の経費として認められないとなると、従業員に経費精算として払ったお金は従業員への給与とみなされることになり、過去の源泉徴収含む給与計算を全部やり直して、さらに源泉税や社会保険料の未納付として利息付で未納付分を払えと言われます(たしか源泉税の納付義務者は徴収義務者だった気が)。

今回のゴーンさんの容疑もまさにこれで、会社としては経費扱いしていたものを、これは実質的にはゴーンさんの個人的な支出だから会社の経費として認められないとして、事実上の給与として認定されたというものだと思います。

基準のあいまいさ

もっとも、上述の例では税務調査案件として説明したので線引きが明確なようですが、そうではないです。

バークレーバウチャーのような、人事部やベテラン税理士ならだれでも知っているような税法上の規定違反なんて日産がやるはずはなく、そうではなくて、日産としては完全に会社の経費として認識して処理していたものを検察サイドが給与認定したという案件でしょう。

例えば、ゴーンさんが、長年の付き合いのある取引先の役員と食事した費用を交際費として落としていた場合に、例え相手が取引先の役員だとしても、検察が、こんなのビジネス上の意味なんかなくて友人とのただの食事だろと主張し、会社側もプレッシャーに負けてそうですねと認めれば、会社経費ではないことになり、自動的にそれは会社資金の私的流用となり、経理上は、自動的に給与ということになります。

経費の私的流用とともに、投資資金の私的流用も挙げられていますが、ロジックは同じ。

例えば、ゴーンさん主導で良くわからないベンチャー企業に投資したとする。

それを、検察が、こんなの会社の投資としての意味はない、単に個人的な付き合いで投資しただけなんだから、ゴーン氏個人の投資を会社資金を使って行ったと考えるのが妥当と主張して、会社側が検察のプレッシャーに負けてそうですねと認めた場合。

これも、名義は会社であっても、実質は会社の投資ではなく、個人的な投資のためにがゴーン氏が会社財産を私的に流用したのが実態という整理になり、経理上は給与となる(ただ、これだと資産と経費の入り繰りだから会社の決算に影響与えそうだけど、研究開発費として計上していたケースなのかな、ここはよくわからない)。

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ただ、こんなのはっきり言って基準なんてあってないようなもので、地検特捜部の本領発揮ともいえ、その気になればやりたい放題のところ。

ビジネス上の意味がある支出なのかを巡って、検察VS会社の全面戦争となると、そもそも明確な基準のない五分五分の対決ですが、ほかの会社役員が不正利用と認めているあたり、すっかり根回しは終わっており、ゴーンさんは不利です。

内部通報を受けて内部調査バッチリ、他の役員は全員不正と認めて検察と握っている、自家用ジェットが空港に着くや否や逮捕して、同時刻に自宅では家宅捜索開始、事前リークがあり空港で待ち構える朝日新聞。

劇場型の逮捕劇に、朝日新聞は号外まで配る始末。

第一段階としての国民への刷り込みは用意周到すぎる。

もう完全に国策捜査の領域だろうと思う。

したがって、事案としては給与の過少申告になるのですが、少なめに申告したとか金額を間違えたというような話ではなく、検察が会社経費50億円分を給与とみなしたという話ですから、監査法人の監査で見つかるような話でもなく、取締役会や会社の内部統制で捕まえられる話でははないと思います。

会社としては、何の問題もなく経費として認識しているようなレベルの経費を、検察が私的流用として認定したのだと思います。

例えば、発注先の選定で稟議も経営会議もあるのにゴーン会長の意向が強かったような案件で、丸ごと私的流用認定したとかそういうレベルの話のような気がする。

そうじゃなくて、ゴーン会長が会社の金を使ってカジノ行ってたみたいなレベルの話なら、日産は間抜けすぎる。ありえないだろ。

まあ、これだけ検察が大々的に動いた以上、今後、ゴーン会長はもともと公私混同が激しかったというトーンの記事がメディアを席巻するんでしょうけど。

しかし、そうだとすると、ほかの役員は全員無事では済まないでしょう。検察と握っている感じがあるので、実際は不正かどうかかなり微妙なレベルの話なんだと思うけどなあ。

とはいえ、それが本当だったらそれはそれで面白いですけどね。

監査法人にとばっちり的な流れ弾が行きそうですね。

もしかして、また新日本監査法人?

金商法違反?

なぜ金商法違反なのか。

これは簡単で、会社のお金を個人的に流用したのだから、刑法上の背任罪や横領罪(違いよく知らない)に間違いなくつながる話ですが、金商法違反の方が要件的に緩いのでしょう。

殺人事件が起きた時に、まずは容疑者を死体遺棄で逮捕してあれこれ事情を聴取して、20日間の勾留期間が来たら殺人罪で逮捕してさらに20日勾留するといういつものやり方と同じだと思います。

もちろん、本丸の罪が背任・横領以外の可能性もあります。

陰謀論

私は陰謀論大好きなのでこの先どんな話がでてくるのか楽しみですが、まだ出てきていないのでとりあえず自前でひねり出し見ます。

まずこの話、会社の資金をカジノで使ったとか、自分の借金の返済に使ったというような話ではないのだと思います(現時点では何の情報もないので完全な予想ですが)。

会社としては完全にビジネス的な経費や投資と思っていたものを検察がさじ加減ひとつで給与認定(私的流用認定)してきて、金商法違反で逮捕したという案件です。

これは、上場企業の役員は震え上がるはず。

大企業の上の方に行けば行くほど、会社のための付き合いなのか個人的な付き合いなのか不明瞭な関係は増えるはず。

特に、経費ではなく投資案件まで含めて私的流用認定してきたのは検察からの相当な厳しいメッセージがあります。

変なところに投資したら逮捕するぞと言っているようなもの。

誰だろうターゲットは。

真っ先に思いつくのはソフトバンクとかかな(適当)。

あとは、ルノーといえばうざいのは筆頭株主たるフランス政府の口出し。

マクロンは相当曲者っぽいし。

日産とルノーの協業体制を考えると両社間取引は大量にありそうで、ゴーンさんのさじ加減ひとつで、日産からルノーに簡単に利益移転できそう。

しかも最近は三菱自動車もグループに入っていますからね。

これはさすがに国は黙っていないかもしれませんね。

終わりに

大ニュースなので、いい加減なこと書くなら情報が少ないうちにと思って書いてみました。

全部妄想ですから、くれぐれも信じたりはしないように。

予想が外れて、日産がマジでゴーン会長の公私混同の支出を黙認してきたのだとしたらそれはそれで面白いですけどね。

笑うしかない事態だと思います。