どうなんでしょうか。
先日銀座を歩いたら、結構ブラックフライデーセールの表示を見ました。
まあ、iHerbなどの海外通販を利用している人からすると、ブラックフライデーやサイバーマンデーも当たり前になって来ているので、日本でもセールやってくれと思うのは自然かもしれません。
中には、「日本人は海外の文化に踊らされ過ぎ」なんていうステレオタイプの批判をする人もいるみたいですが、少しでも消費が増えるのであれば、それに越したことはありません。
ただ、ハロウィンはすっかり定番化しましたが、ブラックフライデーはどうでしょうか。
こういう疑問を持っている人には、下記の書籍が面白いと思います。
まず、書籍の中で、著者はクリスマスの起源に迫ります。
70年代の雑誌を片っ端から調べると、70年代を通じて、全部で6個しかクリスマス特集記事はないそうです。
アンアンが1970年と1972年に、「二人で過ごすクリスマス」的な特集を組むらしいのですが、当時の社会はまだ、「何言ってんだ?」という風潮だったらしいです。クリスマスというのは子供におもちゃをあげるイベントでしかなく、大人にとって年末と言えばお正月だった時代です。
ある意味象徴的なのが1974年の女性セブンの特集記事「クリスマスイブ愛の演出方法」らしく、要するに彼を酔わせてやっちゃいましょうという記事らしい。
この記事は、当時の、大学を出たらとっとと結婚して家庭をもって「大人」になりましょうという時代背景の象徴で、つまり、当時は「子供」と「大人」の中間の人達は実在しているのだけど、まだ「若者」というカテゴリーがいない。
しかし、80年代当たりから、急激に時代が動きます。大人たちが「若者」から搾取する仕組みがここら辺から出てきます。
情報誌が、「若者」の価値を喧伝し、訳の分からない特集を組んで、田舎者に都会ではこうなんだと教えるかのように、特定の行動パターンをさも当然のように記事にして、まだ稼ぎの少ない若者から搾取するシステムを作り始めるわけです。
まだ、1981年のノンノでは、「ペンションで過ごすホワイトクリスマス」という特集で、女の子同士でペンションに行っています。
しかし、1983年のアンアンのクリスマス特集で、「クリスマスの朝はルームサービスで」という記事が華々しく登場し、ここで時代が動きます。
もちろん、時代は少しずつ動いているのですが、歴史が動いたのはいつかと言えば1983年とのこと。
ここから、クリスマスイブに恋人同士が共に過ごすという文化が誕生するわけです。しかも女性主導で男たちに際限のない競争をさせるというやり方が始まります。
なお、男性誌の方ではまだ1983年は、ポパイでもホットドッグプレスでも、「クリスマスに欲しいもの」という、自分が欲しいモノの特集(要するに1年間で紹介したアイテムの総まとめ)しかなく、1987年になって初めて「今年こそ決めるクリスマス」なる特集が登場するらしいです。
こうしてクリスマスを通じて若者から搾取するシステムが出来上がりました。
90年代に入りバブルのころの、フランス料理を食べたらシティホテルに泊まって一夜を過ごすという行き過ぎたブームは鎮静化しますが、クリスマス自体はすっかり根付きました。
この本はこういった感じで、1984年のディズニーランド開園、1991年の東京ラブストーリーなど、80年代90年代を通じて、若者が大人たちに搾取される、というより搾取される仕組みが出来上がっていく様子を詳細な分析で描いている面白い本です。
ただ、個人的に一番印象に残ったのは、「一杯のかけそば」の話かもしれません。
この話というかブームを覚えている人はいるでしょうか。二十代は知らないのかな。
ただ、ストーリーの出だししか知らなくて、結末を知らない人は多いのではないでしょうか。
最初の大晦日と翌年は母と小さな子二人でかけそば一杯を食べるのですが、3年目の大晦日は「死んだ父親が起こした事故の賠償金が払い終わったから来年からはもう少し楽になる」と話しながら3人で2杯食べます。
しかし、それ以降来なくなるのですが、14年後その母と青年二人が帰ってくるのです。立派に成長して。
子供二人は苦学を重ねるも、長男は医者に、次男は銀行員になって帰って来て、今度は3人で3杯のかけそばを食べるという話です。
あの意味不明な大ブームの顛末は本を読んで頂くとして、この話、若い世代(といっても私も含む70年代生れ以降)に読ませると評判が悪いらしい。
何でかわかりますか?
医者や銀行員になったという顛末が気に入らないらしい。
そのせいで嫌味な話と受け止められるということです。
難しい時代になりましたね。
この層には、ハロウィンもブラックフライデーも受けないでしょうね。消費自体、というかお金のにおいのするもの全てが嫌いなのかもしれません。
そう考えていくと、ハロウィン、AKBやEXILE、コミケ等などは、いわゆる若者世代の中でも、さらに若い「学生」にターゲットを絞って、イベント消費好きの若者に育てようとする意図を感じます。
CDなんて売れなくても、イベントで稼ぐわけです。アニメ好きのアニオタも、グッズ買ってイベント行ってとやらないとアニオタは自称できないらしいです。
ハロウィンはイベント消費教育に成功した良い例です。
「大人」側の人達の商魂のたくましさが伝わってきます。
そう考えると、ブラックフライデーはダメっぽいですね。
安易すぎるというか、時代の流れを読んだ行動ではなく、滅びゆく大型小売店の断末魔にしか聞こえません。
あ、今ならiHerbでブラックフライデーセールやっているのでぜひ。