加計学園まとめその他邪推など


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目次

はじめに

本当は、政治関連の話とかはするのはやめようと思っていたのですが、書いてみます。

加計学園問題については、テレビの偏向報道は言うに及ばず、ネットニュースなんかも反安倍か親安倍か結論ありきの両極ですし、良識ぶった中立派はわけわからないといった感じで、情報がカオスと化しています。

そんでもって、先日の閉鎖中審査では、参加者たちの回りくどい答弁のオンパレードで、もう何が何だかわからないといった感じになりました。

特に、私は、国家戦略特区という制度自体に問題がある気がして、そこへの疑念からどうも頭が整理されません。

なので、自分なりに頭を整理してみたいと思います。

友情疑念

加計学園の問題を考える時に、主に2つの主観バイアスが登場します。

まずは一つ目、安倍政権への好き嫌い感情。

安倍政権は、ここ数年、国民世論を二分する法案を連続して通してきましたから、嫌いな人は大嫌いでしょう。

そんな、安倍さんをヒトラーに重ね合わせるような人たちからすれば、安倍さんの親友が理事長を務める学校が登場しただけで、「絶対裏でなんかやってるに違いない」と思うことでしょう。

安倍なら何でもやりかねないという嫌悪感が、勝手に点と点を線で結んでしまうのではないかと思います。

こういった、「絶対裏で圧力かけてるよ」というのは、下衆の勘繰りで当たっているのかもしれませんが、しかし、これでは何の証拠にもなりませんし、単なる陰謀論の域を出ません。

安倍さんを糾弾したいのであれば、行政手続が歪められた事実を立証しなければならないわけで、その点からすると、疑念をいくら深めたところで、怪しさが増したというだけで何にもなりません。

野党の一部でもそこがわかっていないらしく、ここ数日、安倍さんの答弁の矛盾や間違いを追求していたりしますが、総理が嘘つこうが、言い間違いをしようが、いつ申請を知ろうが、行政がゆがめられた事実を指摘しない限り、どれだけ怪しさを積み上げたところで、何もなりません。

意味がないかと言えばそんなことはないですが、抽象的な疑念であれば、支持率が大幅に落ちたことで十分であって、それ以上の成果は望めないでしょう。

以上の主観バイアスを以下では友情疑念とします。

特区疑念

二つ目の主観バイアスが、私を悩ませる、国家戦略特区という仕組みへの疑念です。

国家戦略特区制度というのは、既得権益団体が作った岩盤規制を打ち破るための特別制度です。

岩盤規制を打ち破るためには仕方がないとも言えますが、内閣ではなく、総理大臣個人が主導で進めることが明記されて法的に認められている制度です。しかも実行部隊は選挙で選ばれた国会議員ではなく、首相が直々に選んだ竹中平蔵氏などの民間委員などからなります。

しかしこの仕組み、岩盤規制を打ち砕くために、特定団体からの陳情をきっかけにスタートする制度と言っても過言ではありません。つまり、既得権益を打ち破る反面、その裏側には必ず利益を受ける団体がいます。

したがって、国家戦略特区による岩盤規制の突破は、結論だけ見ると、必ず利益を受ける団体がいます。

つまり、総理大臣主導で、規制緩和の美名のもとで特定の団体への利益誘導をしようとすればいくらでもできてしまう制度なわけです。しかも、国民の代表たる国会で承認された制度ですから、総理大臣の個人的意向で決断しても、金銭の授受とかが無ければ合法ということになります。

もちろん、それが誰もが納得できるものであれば問題ありません。

しかし、外国人受け入れ特区で事業者に認定されたのはパソナグループ(竹中さんが会長)、農業の特区で参入が認められたオリックス農業(竹中さんが社外取締役)など、岩盤規制突破なんだか、自分の身内への利益誘導なんだか分からないことが、現実に国会等の十分な関与なく決まっているわけです。しかもそれらは完全に合法です。

この制度、できた当初から、岩盤規制突破にはこれくらい強力な権限が無いと結局前に進まない派と、いくらなんでも民主的なプロセスが無さ過ぎて危険すぎる派とで、どちらかというと親安倍派のなかでも意見は真っ二つに割れていました。

しかも、竹中平蔵氏などの市場原理主義者・グローバル主義者への反発というのはものすごい強いですから、制度設計だけでなく、実際の人選からも、規制緩和の美名のもとでやりたい放題やるんじゃないかという疑念は相当強いものでした。

したがって、この制度への疑念がもともと強い人達からすると、加計学園問題というのは、浮上した当初から、これはヤバそうだなという認識でした。

こういった、国家戦略特区の仕組み自体に疑念をもっていると、安倍はヒトラー派でなくとも、絶対裏で口きいてるに決まってると勘ぐってしまいます。

これも友情疑念の一部ではありますが、根底にあるものが異なるので、以下、この疑念を特区疑念と呼びます。

行政手続論

だんだん本題に入っていきます。

上述の友情疑念と特区疑念という2つのバイアスがこの問題を考える頭を混乱させます。

この加計学園の問題、支持率を下げるために世論を誘導するだけであれば、友情疑念や特区疑念に基づき、絶対口利きしてるに違いないといった陰謀論を中心に、しどろもどろな答弁などを取り上げて、安倍さんの怪しさを騒ぎ立てるだけで済みますが、具体的に糾弾しようとすると、行政手続に問題があったことを具体的に提示しなくていけません。

具体的に行政手続が歪められたことを立証しない限り、陰謀論の域を出ることはありません。

しかし、実際に様々な情報に触れていく内に、一体どこが問題なのかわからなくなるわけです。

この陰謀論と行政手続論の区分が混同している典型が、そもそも獣医師の需給はどうなっているのかという議論です。

特区疑念を持っていると、そもそも獣医師の需要なんてそこまでなくて、安倍さんとその仲間の民間委員が結託して、岩盤規制の打破に名を借りてお友達に特別の学校設立許可を与えただけなんじゃないのかと疑ってしまいます。

そして、そもそも獣医学部新設の需要がそんなにないとか、4要件を満たしていないじゃないかという批判が始まり、それに対して登場するのが、何を言ってるんだ、文科省の告示がそもそもおかしくて、設置審の審議さえ通れば(教員の質確保と健全な財政基盤のテスト)学校設立は本来自由なはずで、規制する側に理由を提示する挙証責任があるという議論です。

この議論、そもそも獣医師は足りているのかなんてところから始まりますから、根本的な議論のようですが、加計学園問題全体の中ではどうでもよいとも言い得る周縁の議論にすぎません。

この挙証責任論、つまり、2016年3月に文科省が規制理由を説明できなかった時点で文科省の負けなんだとか、議論は終わりだとか、これははっきり言って友情疑念論に引きずり込まれた議論です。

陰謀論への反論としては有効かもしれませんが、行政手続が実際に歪められたかどうかとはあまり関係ありません。同じように、加戸前愛媛県知事がどれだけ獣医学部誘致に注力してきたかの話も行政手続き論ではありません(総論的には非常に重要な話ですが)。

陰謀論を脱するには、具体的な行政手続論をする以外になく、行政手続きが公正に適法に行われたかどうかが焦点です。

とすると、法的根拠を得て適法に設置された特区諮問会議が獣医師が足りていないと判断したのであれば、その判断は尊重しなければならないわけです。

そもそも獣医師は足りているんだとか主張したところで、それは友情疑念や特区疑念に基づく陰謀論を域を出ません。

法に基づいている限り行政手続きは適法と言わざるを得ません。

友情疑念や特区疑念からそこに「本当かよ」と疑ったところで、適法な機関から適法な行政プロセスとして獣医学部不足が提示された以上、その判断自体に難癖付けるのは行政手続論ではありません。

2つの違法性

では、獣医学部新設に向けて動きだした以降、どこに違法な行政手続きがあったのでしょうか。

可能性としては、2つあります。

まずは、不当な圧力。

これは、安倍さんが加計学園で進めるように不当な圧力をかけたという行為そのものが問題になります。

例えば、仮に圧力を加えられた前川さんが無視して、行政手続がゆがめられなかったとしても、圧力をかけたこと自体が問題ですから、圧力をかけた事実が明らかになったらアウトです(国家戦略特区の仕組み上、それでも違法にはなりませんけどね)。

もう一つは、実際に行政が歪められた事実。

これは、もちろん、誰も指示していないのに、全員が忖度した結果そうなったということはあるかもしれませんが、さすがに裏で誰かが指示していた、もしくは、途中から暗黙の合意が形成されているはずで、具体的に行政が歪められているのであれば、違法性があると断定してよいと思います。

以下、具体的に見ていきます。

不当な圧力

不当な圧力で俎上にあるのは、一つのやり取りです。

それは、前川さんが、2016年9月9日に、和泉首相補佐官から、「首相が言えないから自分が言うけど・・・」という枕詞付きで、獣医学部設置をスピーディーに進めるよう言われた、という問題です。

これに対し、和泉補佐官は、「記憶が無いから言ってないと思います」とかいう、いわゆる官僚答弁で否定しているんだか否定しきっていなんだか、とりあえず見ている国民の疑念を逆なでしています。

しかし、私は、このやりとり、論点にならないと踏んでいます。

前川さんと和泉さん、枕詞の有無は別としても、その会話で、加計学園などといった具体的な名前は出ておらず、単に獣医学部新設の件を進めるように話しただけという点では一致しています。

しかし、前川さんとしては、①総理が言えないからという枕詞、②加計さんが総理の友人である、という2点から、これは加計学園で進めろという意味であると受け取った、と先日の閉鎖中審査で答弁したわけです。

ここで、自民党としては、「なんだ、前川が勝手に心の中で忖度しただけで、ただの一人芝居だったことが明らかになった!」となる一方で、野党側としては、「一人芝居じゃねーよ、状況的に圧力かけた以外の何物でもないじゃないか!」、という水掛け論になります。

しかし、ここで、スーパープレーをしたのが、自民党小野寺衆議院議員の質問です(テレビで全然報道されませんが)。

小野寺議員は、前川さんに、2016年9月の時点では、京産大も準備を始めていたわけなんだから、獣医学部新設イコール加計学園とは言えないのじゃないかと質問します。

それに対して前川さん、その時点で京産大が検討を始めたことは知っていたが、具体的な内容を伴うものではなく、具体的な案は加計学園しかなかったから、獣医学部の新設イコール加計学園の認可でしかなかったとあっさり答えたわけです。

つまり、①総理が言えないからという枕詞、②加計さんが総理の友人である、という2点から、これは加計学園で進めろという意味であると受け取った、と言いつつも、その時点では加計学園以外具体的な案はなかったことが明らかになりました。

これは結構大きい話で、2015年以来、国会戦略特区では、獣医学部の新設が最重要案件になっていたわけですが、枕詞があろうがなかろうが、友人だろうがなかろうが、総理が岩盤規制の象徴たる獣医学部の件しっかり進めろよと指示を出すと、客観的には、ニアリーイコール加計学園を進めろという意見にしかならない状況だったわけです。

さらに、小野寺議員、加計学園で進めろという不当な圧力を感じたのであれば、それを受けて官僚の長としてどのような行動をとったのか、松野文科大臣に相談したり、局長を集めて相談したりしたのかと質問したら、前川さん、あっさり、特に何もしていない、獣医学部新設をしっかり進めるように担当部署に伝えただけだ、と答えたわけです。

以上のように、当時具体的な案としては加計学園しか存在せず、首相が指示を出せば事実上、加計学園案の推進としかならない状況、また、前川さんが不当な圧力と言いつつも特に何もしていない点を考えると、不当な圧力の認定は厳しくなります。

さらに和泉首相補佐官が、「総理が直接言えないから私が言う」なんて言っていないと主張して真偽不明になっている状況があり、これは和泉補佐官が怪しいと思う人が多いかもしれませんし、その通りだし、言ってませんてはっきり言えよと叫びたくなりますが、実は、前川さんも記憶が明瞭なようで、そうではないらしいです。

これは自民党の和田政宗議員が明らかにしていますが、前川さん、以前毎日新聞に和泉補佐官から9月6日(9月9日ではなく)に圧力をかけられたと答えていて、しかも記者に、スマホを見せながらスケジュールで残っているから間違えようがないんですと自信満々に語るところまで記事になっているそうです。

どうやら、9月6日に和泉補佐官は海外出張中らしく、あわてて9月9日に修正してきたようなのですが、これもまた、当初は9月9日午前10時ごろなどと言っていたのですが、2016年9月9日というのは朝に北朝鮮がミサイルを打ち上げた日で、10時過ぎに官邸が記者会見をやっているらしく、本当にそのタイミングで首相補佐官に呼び出されたのかという突込みに自分で気づいたらしく、やっぱり午後3時ごろだったと後から修正しています。

以上を考慮すると、やはり、真偽不明ないし判定不能で、不当な圧力をかけたという点だけでは安倍さんが行政手続きを歪めたと主張するには厳しい気がします。

やはり、本丸は、実際に行政手続が歪められたのかどうかです。

なお、上記の他に、「怪文書」として散々もめた文科省内の文書がいくつかあります。

しかし、発言者や出席者などの承認を経たうえでファイナルされ、しかるべきフォルダに保存されていない文書なんて、何の証拠力もないと思うので取り上げません。

怪しい流れの確認

具体的な手続きを見ていきます。

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いわゆる加計ありきで手続きが進められた根拠とされる主要なポイントを確認すると下記のようになります。

2016年9月9日:上述の和泉補佐官の発言
2016年11月9日:「広域的に獣医学部の存在しない地域に限り」の条件が付される。
2016年11月18日:「平成30年4月開設」の条件が付される。
2017年1月4日:「1校に限る」という条件が付される

いわゆるこれが、加計ありきの流れを裏付けるとされる主要論点です。

これらの結果、京産大が不当にはじかれて加計学園になった、つまり、これらは、加計学園の認可を実現するためになされた、歪められた行政手続だというわけです。

細部を見てみます。

京産大排除なのか

行政手続が加計学園のために歪められたというためには、京産大を不当にはじくための手続きがなされたことを立証する必要があります。

まず、「広域的に獣医学部の存在しない地域に限り」という制限ですが、これは京産大もクリアーしているので、京産大を弾くための制限とは言えません。

また、国家戦略特区ワーキンググループ(以下WG)が記者会見で、この条件は、獣医学部新設に獣医師会からの強い抵抗がある中で、前に進めるために既存の学校の近くには作らないからという譲歩を示したものと説明していましたが、おそらくその通りで、なにも怪しいものとは言えません。

次に、「1校に限る」という制限。

これは、WGが記者会見で、獣医師界の強い抵抗があって、最終的に山本大臣が政治的意思決定として決めたと説明していました。

そもそもWGでは2015年から、獣医学部新設の話は、新潟でまずやろうと議論が始まっていて、その後、京都や今治でもやろうとなり、3つともやろうとなっていました。そこにすさまじい抵抗を示したのが獣医師会で、最終的に政治決着に持ち込まれ、1校だけならという条件が付されるわけです。

WGとしては、悔しかったが仕方がない、1校でもいいから蟻の一穴で進めようと思ったと述べています。

これも、その通りじゃないでしょうか。

前半に書いた特区懸念を持ち出すと、獣医師の需給云々の話になってしまうかもしれませんが、その考えが正しいのかどうかはさておき、WGの民間委員(規制緩和万歳派)の人達が、獣医学部が全然足りないと思っているのは間違いなく、おそらく、獣医師会の抵抗に泣く泣く屈したのだと思います。

つまり、WG的には、1校に絞って京産大を排除しようとするインセンティブはどこにもない気がします。

どう考えても、可能であれば、加計学園と京産大の2校とも新設が望ましいという方向で動いています。

ここまで来てやっと本丸に来ました。

問題は、1校しばりの登場する2か月前にWGが自分達から30年4月開設の条件を付した点です。

決戦は30年4月開設条件

加計学園の議論は錯綜していますが、「安倍が絶対裏で口を利いてるに違いない」という陰謀論ではなく、具体的に行政手続が歪められたという、具体的な話をする限り、関ヶ原は30年4月開設という条件に尽きるのではないかと思います。

これ以外は全て、補論に過ぎないような気がします。

まず、京産大と京都府知事が会見をして、京産大が落ちたのは仕方がなかった、加計学園が勝ったのは当然で異論がない、プロセスに不透明さがあったとは思えない、自分たちの準備が出来ていなかっただけ、などと言いました。

しかし、これをもって、加計ありきではなかったと判断するのは早計です。

というのも、京産大の主張は30年4月開設を前提とした上で、そこに間に合わなかったと言っているだけだからです。

つまり、結果論的な視点で現在から過去を見て、客観的な状況を考えると、30年4月開設の条件が付された時点で、京産大の負けが決まって、加計学園の勝ちが決まったわけです。

そして、そのような準備状況は、この条件を付した時点で分かっていた可能性があります。

とすると、この30年4月開設条件を付した理由が合理的なものかどうかが最重要ポイントかと思います。

ここに合理的な理由が無ければ、これは加計学園のために付された不当な条件、つまり、加計学園のために行政手続が歪められた根拠となります。

さて、合理的な理由はあるのでしょうか。

30年開設条件の根拠

この30年開設条件に関しては、当然マスコミも食いついていて、まず、全部議事録が残っていてオープンが売りの諮問会議やWGでの議事録に議論した後がないという点がWGの記者会見では指摘され、どうやって決まったのかという質問が出ます。

WGの回答はシンプルで、できる限り早くやりたかった、2016年末の議論という状況を考えると、平成30年4月というのは最短のタイミングだと思うと、原さんが回答します。

そして、八田座長が、抵抗勢力との争いに時間をかけるのはばかばかしく、なるべく早く実現したかった。議事録に残っている、2015年2月の新潟を前提とした議論では、すぐやろうと提案するも文科省に28年開設は無理だと言われたのでじゃあ29年開設で行こうと議論していた経緯があると、補足します。

本当は29年開設が出来ればよかったが、あれこれ議論しているうちに延びてしまい30年4月になったと。

パブリックコメントでも、獣医学部新設は喫緊の課題であり、急ぐ必要があると記載されています。また、国家戦略特区自体、スピーディーに規制緩和するための制度でもありますから、これはこれで筋が通っている気がします。

しかし、うがった見方をすれば、この説明は、筋は通っているものの、疑惑を晴らす説明になっていません。

もう一つのシナリオ

問題は、2016年11月に「30年4月開設」条件を付すことで、京産大が落ちることをその時点でWGが知っていたかどうかです。

もし、知っていてやったのであれば、獣医師会の圧力で泣く泣く受け入れることになった、2017年1月の「1校に限る」条件を待つまでもなく、自分達で1校に絞ったことになります。

客観的には、その時点で、加計学園1本で行こうという暗黙の合意、加計ありきの状況が出来上がっていたことになります。

そこを疑うには、この30年開設条件が付されなかった場合の想定シナリオを考えてみる必要があります。

それは、開設条件が付されず、例えば31年4月には開設できるなどとした京産大の提案も提出され、その後に獣医師会の圧力で1校制限が付されるものの、加計学園と京産大の両案が検討され、1校しか新設されないにしても、真に優れているのはどちらなのかの検討がなされた可能性があるわけです。

そして、問題は、京産大が勝つ可能性があったかどうかではなく、WGがそれまで、1校に限定するなんてもってのほかで、そもそも新設を原則不可とする文科省の告示を撤廃すべきなんて議論していたのであれば、加計学園と京産大の両方新設がハッピーエンドのはずで、1校制限の出来る前の2016年11月に、京産大を潰すような条件を自分達から加えたことが不合理としか思えない点です。

ここはどう考えるべきなんでしょうか。

完全なる私見

獣医師の育成が喫緊の課題だとしても、1年遅らせることで2校増やせるのであれば、なぜそのオプションを取らずに、30年開設の加計学園1本のオプションを選択したのでしょうか。

加計学園が安倍さんのお友達だからでしょうか。

勝手な予想ですが、たぶんそうじゃないんだと思います。

まず言えるのは、獣医師会の抵抗はすさまじかったのでしょうね。相当タフな交渉だったのだと思います。

2015年初頭から始まっているこの話が全然前に進まない状況の中で、加計学園なら通せる、何が何でも加計学園だけは通す、という認識がWG内で出来上がったんだと思います。

タフな交渉の過程で、戦略特区側が、獣医師会に対して「お前ら安倍さんの親友の加計学園までつぶす気か?」というブラフくらいはかけているかもしれません。

そこが行き詰った交渉の突破口だったんでしょう。

すさまじい抵抗の中で、加計学園だけでもいいからとっとと通してしまおうという結論になるのは、交渉を考えるとおかしい話ではありません。欲をかいて泥沼にはまるより蟻の一穴を開けることの方が重要と考えるのは不合理ではありません。

水面下で、まだ具体的に準備しているのは加計学園だけだから、他には出てきそうもない、30年開設で加計学園だけ通すなんて、獣医師会と握ってたんじゃないだろうか。

しかし、これが実は狐と狸の化かし合いで、告示を出す前日の11月17日に山本大臣が獣医師会を訪れて、従来の予定通り30年4月開設の条件を出す、そして従来通り加計学園は通る見通しだと伝える、ただ、京都もできるかもと伝えたもんだから、大慌てで獣医師会が動く。

そして、2016年12月に猛烈なロビー活動を仕掛けて、「1校に限定する」条件を入れさせた。

こんなところなんじゃないだろうか。

そう考えると、WGがかなり早い段階から、何が何でも加計学園だけは通すと意気込んで、あれこれ指南しているのは納得で、加計ありきであったかのような文書が出てくるのも当然な気がします。

結論

結局のところ、安倍さんの友人として加計学園が優遇されたというわけではないんじゃないかな、この話。

獣医師会の激しい抵抗を受ける中で、加計学園で行くしかないと思ったタイミングが結構早い時点であったんだと思います。

しかし、それは、総理大臣の友人だから優遇しようではなく、激しい抵抗の中で、加計学園には、長い準備期間・地域の協力・総理の親友という点で、獣医師会の抵抗を突破する力があったからでしょう。

他の地域には、抵抗に突破できるかどうか不透明感が漂っていて、その結果、内々では、加計学園だけは何が何でも通す、さらにほかの準備を待っていてはらちが明かないし、抵抗がますます強くなるばかりだから、30年4月開設&加計学園のみで手打ちという合意が出来ていたんだと思います。そして、WGや文科省が熱心に加計学園を指南していた。

そして、それが部分を見ると、加計学園ありきのプロセスに見えるということなんでしょう。

客観的な当否はさておき、諮問会議のメンバーが主観的には、獣医学部の新設が喫緊の課題と思っていることや、加計学園だけでなく、京都も新潟も作りたかったのは間違いなく、どう考えても、加計学園1校に絞るインセンティブが出てくる余地は無いと思います。

別の見方をすれば、出来ることなら京産大も通したかったけど、タフな交渉の過程で、加計学園のみの1点突破に追い込まれたんだと思います。

私自身が国家戦略特区なる仕組みに不信感しかありませんし、獣医師の需給の問題、とくに獣医師の偏在の問題と大学の新設の関係は、竹中平蔵がいる時点で、素直に信じる気にはなりません。

しかし、行政手続が歪められたか否かという観点に立てば、国家戦略特区という仕組みは適法ですし、その諮問会議の意思決定は本的根拠を持った決定で、実現に向かう力が法律上与えられています。

その諮問会議が、不毛な交渉を延々続けてしかも共倒れになるかもしれない加計学園と京産大の2校新設をあきらめて、できる限り迅速な加計学園1点突破を交渉の中で選択したところで、それは交渉の中での甲乙つけがたい意思決定でしかなく、行政手続が歪められたとは結論できないと思います。

補論:外観的独立性

国家戦略特区制度の問題点に、総理大臣主導で特定団体への利益誘導がやろうと思えばいくらでも可能なのに、外観的独立性を維持する規定がないことが挙げられます。

外観的独立性とは、裁判官や公認会計士の職業的義務と言われるもので、要するに、裁判官が自分の親戚を裁判したり、公認会計士が親戚の経営する会社の監査をしてはいけませんというものです。

もちろん、内面的な独立性を維持して公正な裁判や監査をすることは可能なのですが、疑念が生じると証明不能になって、制度自体の信頼が揺らぐので、してはいけないことになっています。

裁判や監査では、この外観的な独立性が問題になった時、そうはいっても判断内容に問題はなかったのではないかなどと中身に関する実質的な議論はされません。疑われかねない身分にもかかわらず仕事を引き受けた時点でアウトとされます。

こういった外観的独立性を確保する制度が、国家戦略特区にはありません。あったら、とっくに竹中さんは辞任に追い込まれています。

しかし、裁判官や会計士ほど話は簡単ではありません。

というのも、裁判官や会計士であれば、代わりがいますし、特区諮問会議のメンバーなら当事者を議論から排除することもできますが、総理大臣を排除することは出来ないからです。代わりがいません。

かといって、総理大臣と親しい企業は特区申請できないなんていう規制はやり過ぎです。

しかも、今回は総理の友人でしかなく、親戚ではありません。裁判官でも会計士でも、面識が少しでもあればダメというわけではありません。

ただ、なんらかの対応は絶対に必要でしょう。かといって、利益相反があれば、申請できないようにするというは明らかに過剰でしょう。

ここ、問題点を指摘するのは簡単でも、改善点を見つけるのは難しい気がします。

個人的には、やはりもう少し国会の関与を増やして議論の慎重さや透明性を増すしかないんじゃないかなと思います。

もちろん、それで全然規制緩和が進まないから、こういった剛腕過ぎる制度が出来たわけですが、しかし、今回のように民間委員中心の諮問会議VS官庁なんて、民主主義的コントロールが無さ過ぎてさすがにまずいと思いますけどね。

いずれにせよ、今回の問題の本質は、今回のようなことがまったく適法で何の問題もないと結論付けされてしまう、国家戦略特区制度そのものにある気がします。

資料

この問題、マスコミの報道があてにならないというのはその通りだと思います。

これがWGの見解

これは良い質疑

これを一切報道しないのはさすがにどうかと思った。