お祝い用の万年筆の選び方


合格祝い、入学祝い、就職祝い用の万年筆の選び方を解説します。

はじめに

3月も半分過ぎて、だいぶ春っぽくなってきました。

春と言えば、入学や就職といった門出の時期ですが、合格祝い、入学祝い、就職祝い等で頭を悩ませている人もいるかもしれません。

そんな中、万年筆というクラシックな贈り物を検討している方も多いかと思います。

そこで、国産万年筆好きとして、国産万年筆に絞ってその選び方を解説します。

贈り物としての万年筆

まず、これだけ字を書かなくなっている時代に、お祝いとして(特に若者に)万年筆はありなのかという疑問があるかと思います。

結論としては、万年筆を贈っても喜ぶかどうかが分からない・不安という相手に万年筆を贈るのはやめた方が良いと言えます。

贈り物はできる限り長く使える良い品を贈りたいという、懐古主義への郷愁はわからないでもないですが、今の時代、価値観の押し付けほど若者が嫌がるものはありません。

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国産と海外製万年筆の違い

万年筆というのは、「ペン先を紙に触れさせただけで毛細管現象によりインクが出る」ペンのことを言います。

筆圧ゼロで字が書けるというのが特徴で、ペン先さえ紙に触れていれば、力を入れずともペンを動かすだけで字が書けるので、長時間字を書いても疲れないと言われます。

その効果はアルファベットの筆記体のように、連続してスラスラ書くときに本領が発揮されます。

一般的には、インクフローが良いという言い方をしますが、ある程度粘性のあるインクが、太いペン先からドバドバ出るような万年筆が、スラスラ滑らかな万年筆として評価されます。

そして、ペンの中ほどをもって、寝かせて書くのが本来の万年筆の使い方です。

しかし、この性質が、漢字を書くとき、特にトメ・ハネなどで仇となります。

まず、アルファベットしか書かないようの海外製万年筆は、ペン先が太く、細字という表記でも、国産万年筆の中字よりも太いくらいです。手帳なんかにメモを書こうとすると、海外製万年筆の場合、細字でも字がつぶれます。

そして、インクフローはペン先の太さと関係してくるのですが、同じ太さだとしても、海外製はインクフローが良いため、トメ・ハネでメリハリの効いた字が書くのは苦手になります。

その点、国産万年筆というのは、細いペン先を用意するとともに、インクフローを絞ることで、ペンを立てて漢字をきっちりと書く人用に最適化されています。

もちろん、日本語にも草書体がありますから、昔の文豪のように海外製万年筆を愛用して、スラスラ書く場合もありますが、楷書で書く人や、いきなり筆圧ゼロでスラスラ書けと言われてもできないような万年筆初心者には国産万年筆が向いていると言えます。

他にも品質管理の高さも特徴で、通販で買っても当たり外れがほとんどなく、仮におかしな品に当たっても、どこで買おうが保証書が付いている限りメーカーで対応してくます。

3大ブランドの選び方

まず、3大国産万年筆ブランドである、セーラー、プラチナ、パイロットをどう選ぶかを簡単に解説します。

プラチナ

プラチナは日本語を丁寧に書きたい人に一番向いている万年筆です。

贈る相手が、几帳面な人、丁寧に整った字を書く人、字が下手な人(字がつぶれにくいので)、の場合はプラチナがお勧めです。

日本製と海外製、数ある万年筆の中でもインクフローが絞られている万年筆らしくない万年筆の筆頭がプラチナ万年筆で、猛スピードで筆記体の英文を書いたら途中でインクフローが付いてこなくなってインク枯れを起こすかもしれませんが、その分多少ゆっくり書いてもインクが出すぎて滲むようなことはなく、トメ・ハネがきっちり決まります(多少力を込めてもにじんだりしない)。

インクフローが抑えられているから書きにくいかと言えばそんなことはなく、うまい表現が出来ませんが、削っていない鉛筆のようなシャリシャリした滑らかさです。

セーラー

セーラーは、国産万年筆の中では一番万年筆らしい万年筆で、ヌルヌルするという表現をするのですが、粘性の高いインク、ほどほどのインクフロー、柔らかいペン先によって、ヌルヌル(スラスラ)日本語をかける万年筆です。

贈る相手が、筆まめで、字を書くのが好きな人や、メモやノートを良くとる人にはセーラーがお勧めです。また、司法試験・公認会計士試験・税理士試験といった、黒インクで字を書きまくる試験を受ける予定があれば、セーラーが断然お勧めです。

力を入れずにスラスラ書くことを目指しながらも、ある程度ペンを立てて書かざるを得ない日本語用に調整されていて、速記もしくは殴り書きをするのであれば、おそらく日本人にとっては、ペリカンやモンブランよりも書きやすいと思います。

パイロット

個人的な感想では、一番評価が難しいのがパイロットの万年筆です。

パイロット製の万年筆は、尖ったペン先、良好なインクフロー、サラサラしたインクが特徴です。

ペン先が紙に引っかかる感じが少しあって、カリカリした書き味なのですが、インクフローが良好のため(3つの内で断トツ)、力を抜きつつもペン先の動きを感じながら丁寧な字を書けるペンです。

しかし、インクがサラサラしているので、力んだり、安い紙を使うとインクが滲みます。

個人的な感想としては、無駄な力を入れないでスラスラ字を書ける、ある程度習字の素養がある人用の万年筆の気がします。ペン先と紙の接触を感じながらも潤沢なインクフローで滑らかに字を書けるペン、習字の訓練を受けた人にはこういうのが書きやすいペンなのかもしれません。

私は字が汚いので、きれいな字を書くときは多少力んでも問題ないプラチナを使い、自分用のメモを走り書きする時はヌルヌルのセーラーを使います。当然、万年筆好きなのでパイロットも持っていますが、カリカリしている割には、力んだりペンを止めるとすぐにインクが滲んでぼやけてしまうじゃじゃ馬です。

贈る相手が、習字の素養がある人にはパイロットが向いていると思います。また、贈り物として考えた時に、ブランド力は抜群ですから、特段セーラーやプラチナの特徴に当てはまらない場合に、最有力候補と言えます。

各ブランドの主要モデル

各ブランドとも、蒔絵モデルなど装飾品的な高級品をたくさん出していますが、万年筆の性能はペン先で決まると言って過言ではなく(金を使って適度の柔らかさを実現するので高価になる)、そういう意味での最高級モデルはそれほど高くなく、国産万年筆の場合、18金を使った大型のペン先を持つフラッグシップモデルは2万円くらいです。

そして、ペン先を18金から14金にしたような、より廉価なモデルが用意されていて、1万円台で金のペン先の万年筆(金ペンといいます)が買えるのが国産万年筆の最大の特色です。

各メーカー、一番売れ筋の1万円台の万年筆に最も力を入れているとも言え、それらのモデルこそ、旗艦モデルと呼んでも良いくらいのクオリティの高さを誇ります。

プラチナ

プラチナ万年筆のフラッグシップモデルはプレジデントという定価25,000円(キャップについた金具部分が銀色のロジウムではなく金メッキになると20,000円)のモデルです。

18金の大型ペン先で、ペン先としては最高級なのですが、外観等に華美な装飾はしていないため気取った感じがなく、字を書く道具としてのこだわり以外は一切ないという点で非常にプラチナらしい万年筆です。

そして、ペン先を18金から14金にして、より価格を抑えたモデルが#3776というシリーズで、プラチナ万年筆と言えば#3776と言われる、ある意味こちらこそフラッグシップモデルです。

気取った感じが皆無で海外製万年筆と対極をなす万年筆ですが、細字万年筆愛好家から絶大な人気を誇る、丁寧に日本語を書くための万年筆です。

セーラー

セーラーのフラッグシップモデルは、プロフィット21というモデルで、贅沢に21金をペン先につかって柔らかい書き味を実現した万年筆です。日本人の万年筆愛好家でこの万年筆を悪く言う人はいないと思われる、国産万年筆の鉄板モデルです。

21金を使った柔らかな書き味で、漢字の混じる日本語を前提とする限り、書きやすさだけなら、これと張り合えるのは万年筆はペリカンのスーべレーンくらいだと思います(パーカー派、モンブラン派、ウォーターマン派の皆さんごめんなさい)。21金のペン先で2万円というのも海外産ではありえない価格です。

なお、プロフィットシリーズは、丸みを帯びた寸胴のクラシックな形状ですが、ペン先は同じままに、より外観をスタイリッシュにしたシリーズがプロフェッショナルギアシリーズです(少し高い)。

セーラーは、日本語を書く上では万能ともいえる、中細字(中字と細字の間)が用意されているのも特徴です(パイロットにもペン先は多数あるのですが、有り過ぎて困る)。

この21金ペン先の最高級製品の下に、プロフィットスタンダード及びプロフェッショナルギアスリム銀というペン先を14金にした13,000円のモデルがあります。

セーラーの万年筆は、これぞ万年筆といった感じでヌルヌル筆を進めることが出来て、メモやノート取り用途などの自分用では最高の万年筆です。

パイロット

パイロットのフラッグシップシリーズはカスタムというシリーズになります。

カスタムシリーズの頂点はカスタム845という、5万円の製品になりますが、エボナイトという特殊樹脂素材の削りだしのボディを漆で仕上げた高級品になります。近くで実物を見ないとわからない質感ですが、シンプルなデザインながら、デザインに凝った外国産の高級万年筆と勝負できる非常にカッコいい万年筆です。

漆塗りという装飾的な要素を除くと、カスタムシリーズの旗艦モデルは、カスタム742か、カスタムヘリテイジ912という、2万円のモデルだと思います(ともにペン先は同じ14金ですがデザインが異なります)。

カスタム742はいわゆる万年筆といった丸みを帯びた寸胴のデザインになります。

一方で、カスタムヘリテイジ912は、細身のスタイリッシュなデザインで、現代的でありながら高級感漂う非常に洗練されたモデルで、世代を問わず大人気なのもうなずけるモデルです(このペンは本当にカッコいい)。

そして、ともに、カスタム74、カスタムヘリテイジ91という、14金のまま少しペン先や全体を小さくしたモデルが1万円であります。

14金のペン先でここまで質感の高い万年筆を1万円出してくるあたりにパイロットのすごさを感じます。

1万円で贈り物を探している人には最高の選択肢だと思います。

インクについて

万年筆の最大の楽しみは無数ともいえるラインナップのインクです。

同じ黒でも、メーカーごとに色合いが違い、語彙が無くてうまく表現できませんが、同じ黒でも全部違う黒です。

純性インク以外を使うのは、メーカーはやめてと言っているし、実際に相性の悪い組み合わせだとインク漏れしたりするのですが、お気に入りの万年筆にお気に入りのインクを入れて使うのは、ボールペンなどではできない万年筆ならではの楽しみです。

もっとも、贈り物として万年筆を贈る場合には、インクを付けるとしても純性インクを贈るのが普通です。セーラーの万年筆と一緒に、モンブランのインクを贈っても、けちったようにしか映りませんからね。

色は、ブルーブラックのインクを贈るのが良いと思います。青でも黒でもない、このブルーブラックという色こそ、万年筆にしかない色で、何とも言えない魅力に満ちた色です。

そして、ブルーブラックの美しさではセーラーの純性インク(ジェントルインク)が有名です。

海外製万年筆愛好家でも、メイン万年筆のインクにセーラーのブルーブラックを使っている人は多く、丸善なんかに行くと、各メーカーの色見本があるのですが、深い藍色といった感じで、単に青と黒の中間ではなく独特の深みを出している点では、張り合えるのはモンブランのミッドナイトブルーくらいの気がします(色は好みの問題ですけどね)。

黒インクに関しては、3社とも似たり寄ったりの真っ黒です(海外では黒インクはあまり使われないので、どのメーカーも黒と言っても真っ黒ではなくかなり癖のある黒ばかりです)。

なお、カートリッジインク以外のボトルインクを使うためのコンバーター(インク吸入器)は、標準でついていないモデルもあるので要注意。

終わりに

贈り物としての万年筆という観点から、国産万年筆の選び方についてまとめてみました。

今どき万年筆なんてもらってもうれしくないという意見も多いですが、最近の若者は皆おしゃれで小物好きでなにより素直ですから、国産万年筆のような、気取らない感じで使いやすいものをあげれば皆喜ぶと思います。

その一方で、金色のフリップなどの田舎臭い高級感や、万年筆のステータス性みたいなものを強調すると嫌がるんでしょうね。

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