テールリスクは想像力が全て


テールリスクという言葉があります。

この言葉は経済・金融業界でよく使われる言葉といってもいいかもしれませんが、意味は、発生確率は低いけど、起きると大変な事象を指します。

例えば、スイスにCERN(セルン)と呼ばれる物理の超大型実験施設があります。この実験施設が稼働する時に、何十人?の物理学者が稼働停止を求める署名を提出しました。

その理由は、CERNを稼働させると、何十億だか何百億分の一の確率でブラックホールが発生して、地球を含む太陽系が一瞬で消滅してしまうかららしいです(本当かどうかは知りません)。

ここまで極端なものに限定しなくてもよいのですが、こういった被害無限大×確率ほぼゼロみたいなやつがテールリスクです。

リーマンショックの経験で、金融業界が使っているリスクモデルは、非常にテールリスクの見積もりが甘かったことが分かりました。まあ、100年に一度の金融危機がここ最近10年おきくらいに発生していることからしても、それは明らかです。

そして、リーマンショックを受けて、リスクマネジメントの考え方も変わってきました(もちろん私は専門家ではないので素人意見です)。

テールリスクの部分はどうやっても正確な計算ができないから確率計算に代表されるリスクの評価に注目しても結局あてにならない、大事なのは何が起きそうかではなく、何が起きるかはふたを開けてみなければわからないという現実を受けた上で、何が起きたらどう行動するか、それ自体に注目するのが大事という考えです。

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まあ、過去のデータを集めて統計学的な計算をいくらしても将来のことはわからないという当たり前のことなのですが、データ分析にはまったり科学信仰が行き過ぎると、どうしても根拠に基づいて合理的に意思決定・行動したいと強く思うようになって、当たり前のこともわからなくなるもので、私もリーマンショックを受けて、なるほどなと感じていました。

しかし、先日の熊本地震で、14日の第1震が起きた時、これが前震で近いうちにもっと大きな本震が来るかもしれないなんて私は微塵も考えませんでした。

リスクマネジメントの本質は想像力なんだなと痛感するとともに、自分はリーマンショックや東日本大震災からいったい何を学んだのだろうかとむなしくなりました。

私の友人で、外資系の弁護士事務所に勤める超高給取りの弁護士がいるのですが、その男が、自分の仕事はクライアントが締結する契約書の最後の方に、こんなことが起きたらどうする、あんなことが起きたらどうすると、確認ミーティングでクライアントに読み聞かせるとそんなこと起こるわけないだろうと鼻で笑われるような、起こりそうもないけど起きたら大変なイベント(偶発事象)をひたすら列挙して対策しておくことで、ビジネス弁護士の能力は、偶発事象がどれだけ思いつくかで決まる、契約書に書いてないことが起きて訴訟になったら事実上失敗だ、みたいなことを言ってました。

確かに、その能力こそが大事なのかもしれないですね。

それにしても、地震の予測は不可能とか言う記者会見には唖然としました。